2021年7月 - 2024年3月
脊椎動物の胚における卵黄代謝機構の進化
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
本研究では、卵黄を用いた糖代謝が脊椎動物の進化の過程でどのように変化していったのかを、コチョウザメ、ネッタイツメガエル、ウズラ、およびトラザメを用いて検討している。今年度は、コチョウザメ、ネッタイツメガエル、およびトラザメにおいて、糖質の合成(糖新生)に関与する遺伝子の発現を調べた。コチョウザメにおいては、卵黄を豊富に含む大型の細胞群が卵黄嚢に収容された状態で発生が進むが、この卵黄嚢の中で糖新生関連遺伝子群が発現した。その後、発生の進行とともにその発現部位は腸管および肝臓へとシフトしていった。ネッタイツメガエルにおいても、コチョウザメと類似の発現パターンが見られた。そして、両種ともに発生過程でのグルコースの増加が確認された。これらの結果から、卵黄を利用した、肝臓形成以前の糖新生が、脊椎動物においては真骨魚類に特有のものではないことが確定的となった。一方で、ネッタイツメガエルにおいては、いくつかの糖新生関連遺伝子が外胚葉(皮膚)において発現していることが分かった。これは、ゼブラフィッシュとコチョウザメのどちらでも確認されていない現象である。この意義を明らかにするため、現在、糖新生関連遺伝子が発現する皮膚の細胞サブタイプも調べている。
トラザメを用いた実験の結果、卵黄嚢、および胚体で発生中の肝臓の両方において、糖新生に関連する遺伝子の発現が確認された。板鰓類の卵黄嚢には真骨魚類に見られる卵黄多核層(YSL)と類似の組織、およびそれを取り巻く内胚葉(腸)が重なっており、これらのどちらに目的の遺伝子が発現しているのかを、今後は検討する予定である。
トラザメを用いた実験の結果、卵黄嚢、および胚体で発生中の肝臓の両方において、糖新生に関連する遺伝子の発現が確認された。板鰓類の卵黄嚢には真骨魚類に見られる卵黄多核層(YSL)と類似の組織、およびそれを取り巻く内胚葉(腸)が重なっており、これらのどちらに目的の遺伝子が発現しているのかを、今後は検討する予定である。
- ID情報
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- 課題番号 : 21K19276
- 体系的課題番号 : JP21K19276
この研究課題の成果一覧
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PNAS Nexus 2024年3月21日 査読有り筆頭著者責任著者