講演・口頭発表等

2020年12月12日

包括的サービス理論のために-欲求の視点からみる古典的サービスから資本制「サービス」産業の成立-

経済理論学会秋季大会
  • 高 晨曦

記述言語
日本語
会議種別
口頭発表(一般)

生産的労働へのスミスの二重の基準に起因する、サービス労働に関する形態論的アプローチと素材論的アプローチは決別し、後者は経済理論の「主流派」になった。しかし、学説史上の軋轢(スミスの第二の基準の時代的背景への誤読)を措いても、労働に対する経済的形態規定と全く無関係なこの素材論的区分の経済的必要性は見出されない。この立場は「サービス」労働の特殊な性格を説明するどころか、「サービス」労働の範疇自体を無意味なものにしてしまう傾向があり、かつスミスの第一の基準で規定される古典的サービスを取り組められない。「サービス産業」という用語を生んだ「第三次産業」論者たちはこの素材論的立場を無批判に踏襲した結果、彼らはこの用語を経済分析に用いる合理性を別の方法で証明しなければならないが、この方法に必要な欲求理論の構築に失敗し、「サービス」産業の範疇を単なる統計カテゴリーにしてしまった。
本報告は、経済分析におけるサービス理論の復権を目指し、労働の形態からして全く異なる古典的サービスと現代の「サービス」を統合する包括的サービス理論の構築を試みる。そのため、古典的サービスから現代「サービス」産業における労働への、労働の形態の転形を歴史的に考察する理論的作業が求められる。
古典的サービスと資本制「サービス」産業では、労働が置かれる生産-欲求の体制に相応しい形で組織・編成されている。古典的サービス労働は直接に収入と交換される農村副業、都市の同職ツンフト手工業に所属する職人およびスミスやマルクスが言及したサービス階級の労働を含む。これらサービス労働は単純再生産-限られた社会的欲求の体系での個人の直接的欲求に対応していた。商人資本の媒介によって拡大される社会的欲求は、古典的サービスを自分の生産物を通じて間接に資本と交換される問屋制度に包摂される労働に変形し、そこから拡大再生産―必要な欲求の体系で資本増殖欲求のために、直接に資本と交換される生産的労働が浮上した。歴史的に、資本制「サービス」産業は最初から産業資本の必要を充たすために組織されている。従って社会的欲求の拡大は産業資本とそれに従属する生産的労働の発達をもたらし、古典的サービスに残された構成部分であるサービス階級の奉仕労働から資本制「サービス」産業での生産的労働への転形に働きかけた。
これで古典的サービスと現代の「サービス」は生産―欲求体制の史的理論に統合され、資本制「サービス」産業の高成長を支えた需要の形成は合理的に説明される。