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Feb, 2014

潰瘍性大腸炎に合併する大腸腫瘍におけるサーベイランス内視鏡検査の臨床的意義

新潟医学会雑誌
  • 伏木 麻恵

Volume
128
Number
2
First page
75
Last page
82
Language
Japanese
Publishing type
Publisher
新潟医学会

【緒言】近年、本邦における潰瘍性大腸炎の患者数は増加傾向である。それに伴い潰瘍性大腸炎の長期経過例も増加し、潰瘍性大腸炎の慢性炎症粘膜を発生母地とする大腸癌、およびその前癌病変と考えられるdysplasiaが増加している。そのため、これらの病変を発見するためのサーベイランスプログラムを確立することが重要と考えられている。しかし、過去の研究では、潰瘍性大腸炎患者に対してサーベイランスを行うこと自体の臨床的意義については十分に検討されてこなかった。本研究の目的は、サーベイランスが潰瘍性大腸炎に合併する大腸腫瘍を早期に発見することおよび予後改善に寄与するかを明らかにすることである。【方法】1991年1月から2012年12月の間に新潟大学医歯学総合病院で手術を施行され、術後の病理診断で潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌もしくはdysplasiaと診断された18例を対象とした。本研究では、潰瘍性大腸炎に合併する大腸腫瘍を発見するためのサーベイランスを、"潰瘍性大腸炎の診断から7年以上経過した全大腸炎型もしくは左側大腸炎型症例に対して、大腸癌のスクリーニングを意図して施行した内視鏡検査"と定義した。そして、サーベイランスの生検で組織学的に癌あるいはdysplasiaが証明され、手術が施行された症例をサーベイランス群とし、サーベイランス群と非サーベイランス群における臨床病理学的特徴および術後成績を統計学的に比較検討した。【結果】対象18例中、サーベイランス群は13例(72%)、非サーベイランス群は5例(28%)であった。サーベイランス群は非サーベイランス群と比較して、リンパ節転移の頻度が有意に低く(8% vs 60%;P=0.044)、Stage0、Iの頻度が有意に高かった(85% vs 20%;P=0.022)。また、サーベイランス群は13例全例が生存しているのに対し、非サーベイランス群では5例中2例が大腸癌死していた。術後の累積5年生存率は、サーベイランス群が100%、非サーベイランス群が50%であった(P=0.018)。【結論】サーベイランスを行うことにより、潰瘍性大腸炎に合併する大腸腫瘍が早期に発見され、潰瘍性大腸炎患者の予後が改善する。(著者抄録)

ID information
  • ISSN : 0029-0440
  • Ichushi Web ID : 2014230042

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