共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2023年3月

隕石に刻まれた初期太陽系衝突史の復元

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(A)  基盤研究(A)

課題番号
19H00726
体系的課題番号
JP19H00726
配分額
(総額)
45,370,000円
(直接経費)
34,900,000円
(間接経費)
10,470,000円

本研究課題の起点である岩石物質の「塑性変形加熱」の効果を実証した. 数値衝突計算で炭酸塩岩からの脱ガス量を計算し先行研究の実験結果と比較した. その結果, 完全流体モデルでは実験結果よりも系統的に少ない脱ガス量となり, 弾塑性体モデルで塑性変形加熱が顕著に起こる場合のみ実験結果を再現できることを確かめた.
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2020年度より博士研究員を雇用し, 3次元衝撃回収実験手順を確立した.まずは地球上の典型的な堆積岩である炭酸塩岩(大理石), 火成岩である玄武岩を用いて衝撃回収実験を行った. 初期の層序を保ったまま衝撃を受けた試料を回収できるまで手順を最適化した. 衝突点に近づくほど衝撃後の変化が顕著になる様子が観察され, 狙い通りに天然衝突と同様の幾何条件で衝撃を受けた試料を回収することができた. 試料が経験した衝撃圧力を定量化するため数値衝突計算を実施した. その結果, 炭酸塩岩がおよそ3 GPaで波状消光と呼ばれる組織を示すようになり, 衝撃指標となり得ることを見出した. また玄武岩では~10 GPa程度の比較的低い衝撃圧で局所的に熔融脈が発生することを発見した. 数値衝突計算で温度上昇も調べたところ, 10 GPa程度では玄武岩の融点を超えることはなかった. 衝撃時の温度分布が従来の想定よりも著しく局在化する可能性を示唆する. このような低い衝撃圧力と熔融脈の存在が観られる組織はHED隕石中で実際に発見されている. この組織を読み解く圧力の尺度を定量的に与えたことになる.
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実際の隕石分析でも成果が得られた. 高解像度二次イオン質量分析を用いて, 小惑星ベスタ由来の隕石に含まれる微小リン酸塩鉱物のU-Pb年代を測定し, 小惑星が経験した41.5億年以前の天体衝突の痕跡を発見した.

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19H00726
ID情報
  • 課題番号 : 19H00726
  • 体系的課題番号 : JP19H00726