共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2021年3月

人権条約の地理的・時間的適用理論の統合的研究―「移行期正義」関連事例に着目して

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
19J12497
体系的課題番号
JP19J12497
配分額
(総額)
900,000円
(直接経費)
900,000円
(間接経費)
0円

研究計画で予定していた個々のテーマについて検討を進め、人権条約の場所的・時間的適用範囲画定における個別的権利規定の働きについて一定程度把握することができた。
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場所的適用については、ユヴァル・シャナイの研究を足がかりに前年度に行った分析を深め、場所的管轄の有無を、締約国が義務を負うに相応しい立場にあるかどうかから評価する「相応性モデル」を提示した。また、学説上の位置づけに関しては、場所的管轄解釈に権利義務の内容を反映させるという意味で、「相応性モデル」は「管轄」解釈における(権利)性質説の一種であることを指摘するとともに、性質説の実証的根拠および理論的優位性を提示した。その成果は、2022年5月現在、博士学位論文「人権条約の場所的・時間的適用理論と積極的義務―実体的権利義務解釈との融合的現象」に表されている。
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次いで時間的適用に関して、欧州人権条約と自由権規約の実行を分析し、(1)欧州人権裁判所は、欧州人権条約第2条の手続的義務の性格を、時間的管轄の検討の中に落とし込み、殺害事件等が条約発効前に生じたのものであっても、一定の条件下で調査義務の適用を認めてきたこと、(2)実効的な調査を可能とする事実的・時間的要素、および加害行為の深刻さに対する評価によって調査義務の適用可能性が異なりうるとする実行は、裁判所が遡及的帰結の回避―条約発効前の事態について間接的に責任をとらされる構図を脱すること―に拘泥せず、現代の視点から見て調査を実施すべき状況にあるかどうかを総合的に判断していること、などを解明した。その成果は、上記博士論文、および『阪大法学』に掲載予定の2本の論文(「生命権および身体保全の権利から生ずる積極的義務の時間的範囲(1)」および「生命権および身体保全の権利から生ずる積極的義務の時間的範囲(2・完)」。それぞれ2022年5月および7月公開予定。)に示されている。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19J12497
ID情報
  • 課題番号 : 19J12497
  • 体系的課題番号 : JP19J12497

この研究課題の成果一覧

論文

  3

講演・口頭発表等

  1