論文

2016年

Fidgety movements観察評価と四肢運動特性の関連

理学療法学Supplement
  • 儀間 裕貴
  • ,
  • 渡辺 はま
  • ,
  • 木原 秀樹
  • ,
  • 中野 尚子
  • ,
  • 中村 友彦
  • ,
  • 多賀 厳太郎

2015
開始ページ
869
終了ページ
869
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2015.0869
出版者・発行元
公益社団法人 日本理学療法士協会

【はじめに,目的】新生児や乳児が示す多様な自発運動のなかでも,最も頻繁に出現するGeneral Movements(GMs)(Prechtl 1986)という四肢・体幹を含んだ全身運動は,脳の自発活動が生み出す身体運動であり,運動の初期発達過程に重要な役割を担っていると考えられている。生後(修正)2~5ヵ月頃の乳児が示すGMsはFidgety Movements(FMs)と呼ばれ,その出現は,皮質-皮質下における活動性の同期やシナプス形成の急速な増加などに基づくと考えられ,その質的な特性が中枢神経系の成熟度・組織化を強く反映するとされる。FMsの質的特性は,これまでゲシュタルト視知覚を用いた観察によって評価されてきたが,近年では様々な機器を用いた特徴解析が試みられている。本研究では,ビデオ画像から抽出した四肢自発運動の座標データより種々の指標を作成し,FMsの観察評価が捉えている運動特性について検討した。【方法】対象は,修正49~61週に自発運動をビデオ撮影した極低出生体重児78例(男児27例,女児51例,平均在胎週数:28週1日±3週0日,平均出生時体重:940.0±282.3g)。撮影は外的刺激の少ない環境で行い,背臥位(肌着着衣もしくは裸)での自然な自発運動を約10分間記録した。撮影した動画を観察し,Prechtlらの方法に基づいてFMsをNormal,Abnormal,Absenceに分類した(観察評価は,GMs観察評価法に熟達した理学療法士2名が独立に行い,不一致の場合は協議の上で分類した)。また,ビデオ画像(30Hz)から四肢運動の座標データを取得し,四肢運動特性を反映する指標として,①平均速度,②運動単位数,③尖度,④躍度,⑤左右への運動性,⑥四肢運動の同時性,⑦平均曲率を算出し,観察評定の結果との関連を検討した。各指標の群間比較には分散分析(①~⑤,⑦)およびt-test(⑥)を用いた。【結果】GMs観察評価によるFMs分類は,Normalが44例(FN群),Absenceが33例(F-群),Abnormalが1例であった。各指標についてFN群とF-群で群間比較(分散分析は,FMs分類:2水準×四肢:4水準)した結果,平均速度,運動単位数,尖度,躍度,左右への運動性,四肢運動の同時性では有意な差を認めなかった。平均曲率は,FMs分類(p=.045)および四肢(p=.001)の主効果,交互作用(p=.004)を認め,下肢においてFN群に比べてF-群における平均曲率値が低いことが確認された(右:p=.001,左:p=.049)。なお,上肢に関しては群間の差は認められなかった。【結論】今回,GMs観察評価によるFMs分類と四肢運動の座標データから算出した各指標の関連について検討した。FMsは「頚部や体幹,四肢が速度を変化させながらあらゆる方向で円を描くような運動(Hadders-Algra & Prechtl 1992)」と定義され,平均曲率を用いた指標はその特徴を捉えたものであると考えられた。本研究の結果は,GMs観察評価の信頼性,それに基づく発達予測精度の向上につながる可能性がある。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2015.0869
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005417919
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2015.0869
  • CiNii Articles ID : 130005417919

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