共同研究・競争的資金等の研究課題

2021年4月 - 2024年3月

古代末期西方セナトール貴族のローマ支配離脱過程 ー内戦の分析を通じて-

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
21K00922
体系的課題番号
JP21K00922
配分額
(総額)
2,600,000円
(直接経費)
2,000,000円
(間接経費)
600,000円

計画の初年度である2021年度は主に学説史および史料調査・関連文献の収集を実施した。その際に検討したのは、4世紀後半から6世紀のガリア地方エリート層の政治動向解明という本研究の目的を念頭に置きつつ、何が考察されるべきか、また十分な分析を可能とする程度の史料が伝存するトピックは何かである。その作業から、380年代のマグヌス・マクシムス反乱、410年代のコンスタンティウス3世反乱、420年代のウァレンティニアヌス3世治世とそれぞれにまつわる問題群が浮かび上がってきた。
また、5世紀半ば以降のガリア都市社会を理解するうえでの一つのキーワードである司教支配についても検討を進めた。ガリアにおけるローマ帝国支配終焉後、地方名望家層は司教職に活路を見出していく。そのような司教の一人であるオーセール司教ゲルマヌスの伝記は、彼が未だ帝国支配の回路のなかで行動していたことを示していた。
加えて、4世紀末北アフリカの武官ギルドーの「反乱」とその記憶に関する論文を執筆した。皇帝側が発したプロパガンダは、ギルドーを帝位を狙った簒奪者あるいはローマ文明の部外者として描き出していた。他方で事件の舞台となった北アフリカでは、教会内紛争においてギルドーとの協力関係が非難の材料として繰り返し想起されていた。反乱の記憶は中央政界のプロパガンダに加えて、現地社会特有の文脈によっても形成された。
最後に、6世紀の歴史家ヨルダネスの作品『ゲティカ』の翻訳・註釈作成を行なった。この作品はゴート人の歴史をその起源から著者の同時代に至るまで扱う。本研究にとっては4世紀後半~5世紀の帝国政治史に関する貴重な情報源である。今年度はテクスト全体のおよそ5分の1にあたる1~66節までを訳出し、学術誌に投稿、掲載決定となった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21K00922
ID情報
  • 課題番号 : 21K00922
  • 体系的課題番号 : JP21K00922

この研究課題の成果一覧

MISC

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書籍等出版物

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  • 周藤芳幸 (担当:共著, 範囲:第14章「塗り重ねられるギルドー「反乱」の記憶」)
    山川出版社 2022年6月 (ISBN: 9784634672550)

講演・口頭発表等

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