2019年4月 - 2022年3月
アミノペプチダーゼ機能不全に伴うセロトニン合成神経異常と不安障害発症機構の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
小胞体アミノペプチダーゼ(ERAP1)遺伝子欠損マウスから神経幹細胞を単離し、その性状を野生型細胞と比較したところ、本遺伝子欠損がセロトニン合成遺伝子の発現を亢進することを見出した。加えて、上記遺伝子欠損細胞を神経細胞へと分化させたところ、神経突起の形成不全を引き起こした。以上の結果は、ERAP1がセロトニン合成と細胞分化という別個の神経機能を制御していることを示唆する。また、この現象は、同マウスの脳内で観察されたセロトニン神経の性状と一致した。
ERAP1には2つのタイプ(分泌型と小胞体局在型)が存在する。そこで次に、両者のセロトニン合成遺伝子への影響について検討した。神経幹細胞の培養液中にアミノペプチダーゼ阻害剤を添加した結果、阻害剤は上記合成遺伝子の発現には影響を及ぼさなかった。ERAP1遺伝子欠損神経幹細胞上でERAP1遺伝子を一過的に発現したところ、セロトニン合成遺伝子の発現量が野生型細胞のように抑制されることが分かった。一方で、失活させた変異体ERAP1を発現させてもこのような現象が認められなかった。以上の結果を統合すると、セロトニン合成遺伝子の発現抑制には内在性ERAP1の酵素活性が重要であることが示唆された。
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また、本研究過程で計画では予期しえなかった結果が得られた。ERAP1の類縁酵素であり、免疫において本酵素と協調的に働くP-LAPは、脳内のいくつかの神経核において、基質であるバソプレシンと共局在していた。さらにP-LAPの発現は概日リズムを有しており、バソプレシンのそれとは逆位相を示すことを明らかにした。ERAP1発現リズムの有無については、まだ確認できていないが、このようなアミノペプチダーゼのリズミックな発現は、情動が概日的に制御されうる根拠の一つとなりうる。
ERAP1には2つのタイプ(分泌型と小胞体局在型)が存在する。そこで次に、両者のセロトニン合成遺伝子への影響について検討した。神経幹細胞の培養液中にアミノペプチダーゼ阻害剤を添加した結果、阻害剤は上記合成遺伝子の発現には影響を及ぼさなかった。ERAP1遺伝子欠損神経幹細胞上でERAP1遺伝子を一過的に発現したところ、セロトニン合成遺伝子の発現量が野生型細胞のように抑制されることが分かった。一方で、失活させた変異体ERAP1を発現させてもこのような現象が認められなかった。以上の結果を統合すると、セロトニン合成遺伝子の発現抑制には内在性ERAP1の酵素活性が重要であることが示唆された。
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また、本研究過程で計画では予期しえなかった結果が得られた。ERAP1の類縁酵素であり、免疫において本酵素と協調的に働くP-LAPは、脳内のいくつかの神経核において、基質であるバソプレシンと共局在していた。さらにP-LAPの発現は概日リズムを有しており、バソプレシンのそれとは逆位相を示すことを明らかにした。ERAP1発現リズムの有無については、まだ確認できていないが、このようなアミノペプチダーゼのリズミックな発現は、情動が概日的に制御されうる根拠の一つとなりうる。
- ID情報
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- 課題番号 : 19K07405
- 体系的課題番号 : JP19K07405