市川裕

J-GLOBALへ         更新日: 16/03/11 17:01
 
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研究者氏名
市川裕
 
イチカワ ヒロシ
URL
http://kaken.nii.ac.jp/d/r/20223084.ja.html
所属
東京大学
部署
大学院・人文社会系研究科
職名
教授

プロフィール

青春の一冊:キルケゴール『キリスト教の修練』杉山好訳、白水社、1963年。
 私が東大文1に入学したのは、昭和47(1972)年の4月で、まだ東大紛争の余燼が残り、構内には立て看板が並んでいたが、私の中ではすでに紛争の熱気は去っていた。高校在学時から「しらける」という言葉がはやった世代で、何のために学ぶのか、という問い、否それ以上に、何のために生きるのか、に直面していたように思う。そのせいか、私は宗教、特にキリスト教思想に関心が湧いていた。といっても、元来キリスト教とは無縁で、聖書も読んだことがなく、聖書という本を書店で買うことさえ引け目を感ずるほどに、信仰からは遠い存在であった。どちらかといえば、クラシック音楽を通して西欧キリスト教文化に対しての憧憬が強かった。モーツァルトのレクイエムを歌うという合唱団に入団したのもそのせいである。1年生のとき、これぞと選んだゼミナールのなかに、「バッハのヨハネ受難曲を聴く」という科目があった。レクラム文庫版でテキストを読み、かつ音楽鑑賞をするという、きわめて駒場らしいゼミである。内容はおおかた忘れた。残っているのは、ぼろぼろのテキストと、それが縁で、担当の杉山好先生が訳されたキルケゴール『キリスト教の修練』を買って読んだことである。これも内容は忘れてしまった。きわめてまじめな本であり、厳しい生き方が説かれていたことは強く印象に残ったようである。というのは、続いて『愛のわざ』(上下巻)も読んだからである。詩人の愛と隣人愛が絶対他の関係にあるということは、今でも時々、講義で話題にするほど、心に刻印された。けれど、自分にとって1冊を挙げるとすれば、どうも『愛のわざ』ではないように思えてならない。そこで、実に久しぶりに、学生時代の本が並ぶ書棚から『修練』を取り出して開いてみた。「矛盾はその人を選択の前に立たせる。そしてその人がいかに、またなにを選ぶかによって、その人の実体が顕わされるのである」という箇所に、たった一ヶ所傍線が引いてあった。杉山先生の解説を見た。「・・・自分自身の生の現実のなかから、いわば汗と涙とそしてまた血を流しつつくみとってきた実存的弁証法をもって、キルケゴールはいまや本書において、聖書に伝えられたイエス・キリストその人の姿を凝視するのである」と。そうだったのか。私がおぼろげながらも、この本にある種の強い愛着を持ち続けていた理由がわかったような気もする。私は法学部を卒業してから、聖書研究に転じ、今はユダヤ教を専門にする研究者となった。はたして、この本は自分のそれ以後の生き方にどれほどの影響を及ぼしているのだろうか。こじつける必要はないが、この本は、自分がこれまで考えてきた以上に、深いところで人生への取り組みを方向づけたのかもしれない。こんなことを書くと、私をよく知る昔の仲間たちは、あっけにとられるにちがいない。人は見かけによらないものなのであるから。(40字x30行、改行なし)

研究分野

 
 

経歴

 
2004年
 - 
2010年
東京大学 大学院・人文社会系研究科 教授
 

論文

 
市川 裕
東京大学宗教学年報   (32) 1-19   2014年
論文/ArticlesPalestine of the post Second Temple era witnessed the emerging transformation of modes of Jewish religious consciousness. With the destruction of the Second Temple of Jerusalem by the Romans in 70 C.E., Judaism, whose form of worship re...
市川 裕
東京大学宗教学年報   (30) 89-101   2012年
2010~2012年度文部科学省科学研究費補助金基盤研究 (B) 「宗教概念ならびに宗教研究の普遍性と地域性の相関・相克に関する総合的研究」 (研究代表者 : 池澤優) 課題番号 : 22320016 報告書
国制としてのユダヤ教とイスラーム:ギリシア的ポリテイア概念からのアプローチ
市川裕
『CISMORユダヤ学会議4』同志社大学一神教学際センター   48-66   2011年10月   [査読有り][招待有り]
市川 裕
宗教研究   85(2) 293-317   2011年9月
本論文は、ユダヤ教共同体が一五〇〇年間、社会的にパーリアの状態にあった共同体の内部において形成したユダヤ法の精神文化の意義を考察する。古代ユダヤ社会は、西暦一世紀から二世紀にかけて、ローマ帝国からの独立を目指して二度の大戦争を交え、神殿の崩壊、社会の壊滅、エルサレムからの追放といった一連の苦難を受けた。そののち彼らは、政治的自立と独立の夢を放棄し、唯一神の教えの徹底的な学習と実践を自らの生きる道と定めることを決断した。そこから導かれるタルムードの学問は、神への愛に基づいて、徹底した討論によ...
市川 裕
キリスト教文化研究所紀要   (30) 31-45   2011年
市川 裕
東京大学宗教学年報   (27) 1-15   2009年
論文/ArticlesThis paper examines modern Jewish messianism in the context of the pursuit and struggle for new identities among Jews in the modern era. Jewish emancipation and the acquisition of civil rights were looked upon as a part of universal sal...
市川 裕
東京大学宗教学年報   (20) 1-14   2002年
Recent studies of the Qumran documents have stimulated new perspectives on ancient Jewish history and Jewish mysticism, through which new light has been shed on the literary activity of the priestly class in the Second Temple period. Priests of th...
市川 裕
筑波大学地域研究   8 173-195   1990年
市川 裕
東京大学宗教学年報   6 15-32   1989年3月
市川 裕
筑波大学地域研究   7 165-185   1989年
市川 裕
筑波大学地域研究   6 259-275   1988年
市川 裕
筑波大学地域研究   5 95-110   1987年
市川 裕
筑波大学地域研究   5 995-110   1987年
市川 裕
宗教研究   53(1) p1-24   1979年6月

Misc

 
市川 裕
ユダヤ・イスラエル研究   (26) 96-100   2012年12月
市川 裕
ユダヤ・イスラエル研究   (24) 62-66   2010年12月
市川 裕
東京大学宗教学年報.別冊   8 29-31   1991年3月

書籍等出版物

 
図説 ユダヤ教の歴史
市川裕 (担当:編者)
河出書房新社   2015年3月   
食のフォーラム32 宗教と食 
市川裕 (担当:分担執筆, 範囲:第II部 第1章ユダヤ教ー神との契約)
ドメス出版   2014年10月   
阪急コミュニケーションズ   2012年12月   ISBN:4484122383
川村 邦光, 市川 裕, 大塚 和夫, 奥山 直司, 山中 弘, 山折 哲雄
朝倉書店   2012年   ISBN:9784254500158
市川裕, 松村一男 (担当:共著)
リトン   2009年12月   ISBN:4863760086
市川 裕
山川出版社   2009年11月   ISBN:4634431378
リトン   2008年10月   ISBN:4947668962
岩波書店   2008年9月   ISBN:4000254081
関谷 定夫, 市川 裕, 高倉 洋彰, 米倉 立子
西南学院大学博物館   2007年   
市川 裕
東京大学出版会   2004年4月   ISBN:4130104063

競争的資金等の研究課題

 
文部科学省: 科学研究費補助金(基盤研究(A))
研究期間: 2007年 - 2010年    代表者: 月本 昭男
本研究はユダヤ教,キリスト教,イスラム教における神観につき,比較宗教史的観点から、4.で述べるように、四つの側面から実証的総合研究を行った。そのうち、(1)「古代ユダヤ教における一神教成立の解明」については、下ガリラヤのテル・レヘシュ遺跡発掘調査により、古代イスラエル最初期の宗教に関する実証的なデータが発見され、成果の一部はV国際宗教史会議(トロント大学、2010年8月)および「国際ガリラヤ会議」(立教大学、2011年5月)で公表した。(2)~(4)の課題の研究成果については、以下の報告4...
文部科学省: 科学研究費補助金(基盤研究(B))
研究期間: 2006年 - 2009年    代表者: 市川 裕
近代ユダヤ文化を理解するに当たっては、各地の離散ユダヤ人社会の地域的多様性とラビ・ユダヤ教の伝統的枠組との両面から、しかも複数のデシプリンを組み合わせることによって、理解が格段に深まることが明らかになった。それとともに、ユダヤ文化の多様性の理解は、各地域における近代化の特徴を浮き彫りにするという意味で、ユダヤ研究の重要性が認識された。共同研究の成果としては、『ユダヤ人と国民国家』(岩波書店2008)の出版があるが、各自の個別研究においても飛躍的な研究業績を積み重ねることができた。加えて、ア...
文部科学省: 科学研究費補助金(特定領域研究)
研究期間: 2005年 - 2009年    代表者: 月本 昭男
現在のイスラエル国ガリラヤ地方にあるテル・レヘシュ遺跡にて、5次にわたる考古学調査を行った。これによって、同地域における青銅器時代から鉄器時代にかけて見られる都市の発達とその文化的特性を明らかにすることができた。またアマルナ文書をはじめとする文献研究においては、上記テル・レヘシュが前2千年紀後半のエジプト碑文に言及されるアナハラトと同定されることが明らかになった。またこれまで発信地が不明であったアマルナ書簡237~239番がテル・レヘシュから発信された可能性が高いことを突き止めた。
文部科学省: 科学研究費補助金(基盤研究(B))
研究期間: 2003年 - 2005年    代表者: 鶴岡 賀雄
「宗教(religion)」という概念自体の歴史的成立事情、とくにそれが近代西欧社会におけるプロテスタント教会のありかたに暗黙のうちに準拠して形成されたものであることをふまえ、またその政治的含意も考慮に入れて、宗教学、宗教研究という営みそのもののあり方を反省することが、世界の宗教学、宗教研究におけるこの10年ほどの傾向であった。本研究は、そうした「宗教」の歴史化、ないしコンテクスト化を踏まえたうえで、現在の世界でどのような宗教研究が新たに試みられているか、そしてどのような成果を生みつつある...
文部科学省: 科学研究費補助金(基盤研究(B))
研究期間: 2003年 - 2005年    代表者: 市川 裕
本研究は、3つの目的、(1)近代ユダヤ人のアイデンティティの危機のあリ方、(2)ホスト社会の近代化の特徴、(3)イスラエル国家の問題点の整理をめぐって、ディシピリンを異にする13名の研究者による総合的研究を志したものである。国家理論が19世紀から20世紀にかけて、根本的に変化したことに鑑みて、研究成果を地域・時代別にまとめることによって、主題を鮮明なものにすることができた。方法論については、(a)宗教学・社会哲学・知識社会学からのアプローチ、(b)文学・言語的表象からのアプローチ、(c)国...