共同研究・競争的資金等の研究課題

2009年 - 2009年

中国古代帝国の関東統治について

日本学術振興会  科学研究費助成事業 奨励研究  奨励研究

課題番号
21904006
体系的課題番号
JP21904006
配分額
(総額)
500,000円
(直接経費)
500,000円

研究目的…関中平原に首都を置いた秦・前漢が、関東(黄河下流域を中心とする広大な平原地帯)をいかにして統治したかを、いわゆる「強幹弱枝」(首都の人口・経済を充実させ、地方のそれを弱めることで中央集権の確立に資する)政策の分析を通じて解明する。
研究方法…『史記』『漢書』など基本的な伝世資料の精査に加え、地方誌資料や近年発見が相次ぐ出土資料も参照し、研究を進めた。
研究成果…秦・漢時代にはさかんに徒民(人民の強制移住)が行われた。特に前漢期には、首都圏たる関中への「帝陵徒民」が元帝期まで連綿と継続された。
しかし、徒民政策についての従来の解釈には疑問な点があった。徒民によって地方有力者層の勢力を削ごうとする一方、彼らの財力・軍事力をもって匈奴の侵攻や諸侯(主に「関東」のそれ)の反乱に備えるという目的も資料には見える。しかし疲弊した徙民たちが「強幹」や対匈奴防衛に役だったとは思われないし、一方彼らが首都圏において勢力を維持・拡大したならば、かえって王朝の存続を脅かす存在ともなり得。
実は、徙民に際して田宅や莫大な金銭を賜うなど、相当な反対給付があった事実も史料に見える。「強幹弱枝」という目的は確かにあったにせよ、その実現のためには利益誘導による懐柔が要されたという社会的事情は無視できない。
本研究により、従来考慮されてこなかった利益誘導として、匈奴や西方オアシス都市国家との貿易に伴う利益供与もあった可能性が判明した。そうした利益誘導があって初めて、関東の多数の人々が唯々諾々と先祖の地を離れ、新天地に移住したのである。秦・漢帝国の「中央集権的」な「専制帝国」というイメージは、本研究によりある程度以上相対化されたと言えよう。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21904006
ID情報
  • 課題番号 : 21904006
  • 体系的課題番号 : JP21904006