2021年6月
医療ビッグデータを活用したドラッグリポジショニングによるオキサリプラチン誘発末梢神経障害の予防薬開発
臨床薬理の進歩
- 巻
- 号
- 42
- 開始ページ
- 72
- 終了ページ
- 84
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (公財)臨床薬理研究振興財団
大規摸医療情報データベースや遺伝子発現データベースを用いたビッグデータ解析、基礎研究、臨床研究を融合した手法を用いて、オキサリプラチン誘発末梢神経障害(OIPN)の予防薬となりうる既存承認薬を探索し、その有効性を検証した。2007年第1四半期から2017年第1四半期までにFDA有害事象自発報告データベース(FAERS)に報告された7738415件の有害事象データからオキサリプラチン使用患者の報告を抽出し、解析した。Library of Integrated Network-based Cellular Signatures(LINCS)を用いて、OIPN関連遺伝子の発現を抑制する化合物を検索した。OIPNに対する有効性については、von Frey test、OIPNモデルラット、担がんモデルマウス実験などで解析した。FAERS解析とLINCS解析から、シンバスタチンが予防薬候補として抽出された。OIPNモデルラットを用いた検討の結果、シンバスタチンを含むスタチン系薬剤は痛覚過敏反応を有意に抑制することが明らかになった。OIPNモデルラットのDRGサンプルを用いたリアルタイムPCRとsiRNAを用いたノックダウン実験により、OIPNに対するスタチン系薬剤の抑制効果はGstm1発現の増加を介していることが示唆された。担がんモデルマウスを用いた検討により、スタチン系薬剤はオキサリプラチンと併用しても抗腫瘍効果を減弱させないことが確認された。臨床患者データの後方視的カルテ調査から、スタチン系薬剤はOIPNを抑制する効果があることが示唆された。
- ID情報
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- ISSN : 0914-4366
- 医中誌Web ID : V625070009
- J-Global ID : 202102255894469685