MISC

2018年5月

ホスファチジルイノシトールの特徴的脂肪酸鎖の異常による脂肪肝発症機構の解析

脂質生化学研究
  • 田中 悠貴
  • ,
  • 嶋中 雄太
  • ,
  • 河野 望
  • ,
  • 新井 洋由

60
開始ページ
87
終了ページ
88
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
日本脂質生化学会

生体膜を構成するリン脂質の一つであるホスファチジルイノシトール(PI)は、他のリン脂質と異なり、sn-1位にステアリン酸(18:0)を、sn-2位にアラキドン酸(AA、20:4 n-6)を有する分子種が圧倒的に多い。当研究室では、PIにAAを選択的に導入する酵素LPIAT1を同定し、LPIAT1欠損マウスを用いた解析から、PIの脂肪酸組成が胎生期における脳の形態形成に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。近年、GWAS解析によりヒトにおけるLPIAT1発現低下が非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD)のリスクファクターであることが報告された。そこで、肝特異的LPIAT1欠損マウスを作成したところ、このマウスの肝臓ではトリグリセリド(TAG)が蓄積し、脂肪肝を自然発症した。以上の結果からLPIAT1が肝臓のTAG量の制御に重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、LPIAT1欠損肝癌由来細胞株を作成し、LPIAT1の発現低下がTAGの蓄積を引き起こす機序を分子レベルで明らかにすることを試みた。その結果、LPIAT1欠損肝細胞では細胞自律的にTAGが蓄積した。さらにLPIAT1欠損肝細胞ではPI代謝に異常が生じ、このPI代謝の異常がTAGの蓄積を引き起こすことが明らかになった。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 0285-1520
  • 医中誌Web ID : S529210037

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