臀部筋肉内注射部位である「四分三分法の点」および「クラークの点」における上臀動脈・静脈、上臀神経損傷の危険性について、実習用遺体29体53側を対象に形態学的検討を行った。「四分三分法の点」は、皮下組織の直下に大臀筋が分布していた例、および大臀筋の上外側縁部に近接していた例が24側(45.3%)で認められた。また、この24側のうち、注射針を中臀筋表層まで刺入した場合、中臀筋表層を走行する上臀動脈・静脈に近接する例が10側(41.7%)でみられた。さらに、「四分三分法の点」では中臀筋深層まで注射針を刺入した場合、中臀筋深層を走行する上臀動脈・静脈、上臀神経への近接例が40側(76.9%)でみられ、「クラークの点」に比べて1.7倍多かったことから、神経・血管損傷の危険性が二重に高いことが示唆された。よって、大臀筋を貫通する頻度の少ない「クラークの点」が、より神経・血管への注射針刺入の危険性が低い安全な注射部位であることが考えられた。(著者抄録)