稲垣 春樹

　イギリス帝国史を研究しています。複数のアクター・ネットワークが相互作用するなかで植民地における支配と被支配の関係が生成し、変容していく過程を多面的に描き出すことを目標としています。博士論文および2021年の単著では、イギリスのインド植民地支配について、植民地政府と裁判所の政治的な対立に着目して考察しました。

　現在は、イギリス帝国における法と暴力の関係について、19世紀〜20世紀初頭の英領インドにおける「反乱」「暴動」「テロリズム」と緊急事態（emergency）法制を事例として研究するプロジェクトを開始しています。さらに、19世紀のイギリス帝国における法をめぐる政治が、同時代のイギリスにおける自由主義国家のあり方に環流する様子や、20世紀以降の国際法、人権、脱植民地化のプロセスに与えた影響についても関心を持ち、共同研究を行なっています。

　日本帝国による朝鮮、満洲国、台湾、沖縄の植民地支配において法と暴力が果たした役割についても、比較史的・関係史的な関心を持っています。

　青山学院大学文学部史学科の3・4年生ゼミナールでは、近現代のイギリスおよびイギリス帝国の歴史について、政治、経済、社会、文化に関する諸事象を幅広く取り上げ、人種、宗教、階級、ジェンダーといった要素に注意しながら、日本語/英語の文献や史料を読み、議論しています。

　★論文等の抜刷をご希望の方はメールでご連絡ください。お送りいたします。