共同研究・競争的資金等の研究課題

2009年 - 2011年

18、19世紀転換期のイギリス福音主義者の政治行動 : 対仏戦争とインド統治をめぐって

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
09J10760
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
2,100,000円
(直接経費)
2,100,000円

本研究は、18世紀末から19世紀初めにかけての対仏戦争期において、イギリスの福音主義者の国内における政治活動が、海外宣教運動をはじめとする彼らの帝国問題への関与の仕方、とくに当時もっとも大きな帝国問題のひとつであったインド統治問題への関与の仕方にどのような影響を与えていたのかを、福音主義者の人物誌的研究に基づいて明らかにしようとするものである。第三年次となる本年度は、帝国ネットワークと植民地インドの関係についての検討を行いつつ、福音主義者による宣教運動をより広い歴史的文脈に位置づけるための史学史的論文の執筆を行った。
史学史的論文では、とくに1990年代以降の研究潮流に焦点を当てて、「新しい帝国史」研究、修正主義研究、帝国ネットワーク論を検討した。帝国ネットワーク論は、植民地総督、博愛主義者、入植者という本国と植民地を結ぶ三つのネットワークの競合という視点から19世紀前半のイギリス帝国史を捉えなおそうとする研究潮流である。この成果は、「帝国と宣教-19世紀イギリス帝国史における宗教の復権-」として『史学雑誌』(史学会)121編6号(2012年)に掲載予定である。また本年度も1806年のヴェロール反乱に関する事例研究を継続した。平成24年3月2日から12日にかけてイギリスに滞在し、英国図書館(British Library)においてインド関係史料および宣教関係史料を閲覧した。この調査・検討の成果は、1806年ヴェロール反乱に関する事例研究論文として公表することを予定している。またイギリス滞在中にロンドン大学のJon E. Wilson博士と面談し、史料や研究文献に関する情報を交換した。
本研究は本年度をもって一応の終了を迎えるが、イギリス人による宣教と帝国ネットワークの関係を体系的に検討したことによって、帝国における宗教の問題を帝国の一般史のなかに位置づけて再検討するためのひとつの基礎を提供することができたと考えている。

ID情報
  • 課題番号 : 09J10760