58歳女。健診の上部消化管内視鏡検査(EGD)で有茎性の胃ポリープを指摘され、前医を受診した。前医のEGDで胃体中部前壁に12mm大のIV型ポリープを認められ、精査加療目的で当科に紹介された。当科のEGDでは前医と同様の所見に加え、胃体部に大彎まで萎縮性胃炎が及ぶpangastritisを認め、血管透見像が著明であった。一方で前庭部には明らかな萎縮性胃炎は認められなかった。ポリープの基部と周囲粘膜は萎縮性変化のみであり、内視鏡的粘膜切除術の適応と考え施行した。切除標本の病理組織検査で類円形〜卵円形に腫大した異型核と豊富な細胞質内粘液を有する腫瘍細胞を認め、高分化腺癌と診断した。また、ポリープの基部に非癌の過形成変化を認めたことから、背景に腺窩上皮型過形成性ポリープが存在すると推測された。免疫染色では、Muc5ACが強陽性、Muc2が一部に陽性、Muc6が陰性であり、腺窩上皮型癌と考えられた。術前のEGD所見から自己免疫性胃炎(AIG)が疑われていたため追加採血検査を行ったところ、抗胃壁細胞抗体160倍、ガストリン4600pg/mLと高値が認められ、AIGと診断した。