基本情報

所属
九州大学 大学院農学研究院 助教
学位
博士(農学)(2025年3月 九州大学)

連絡先
abehayatokyudai.jp
研究者番号
01023473
ORCID iD
 https://orcid.org/0000-0001-6092-0130
J-GLOBAL ID
202301004089493793
Researcher ID
MBG-8080-2025
researchmap会員ID
R000048938

外部リンク

森林の生態系機能(生態系サービス・多面的機能・公益的機能)、特に森林が炭素を吸収・貯留する「炭素隔離(固定)機能」の評価が専門です。

地球・地域規模で生じる様々な環境変動に対して、生態系とその機能をいかに後世に残していくかを考えるために、『森の木はなぜ・どのように死ぬのか』『森の中で木が死ぬことは、生態系の機能をどう動かすのか』を調べています。

最近は、「(1)土壌侵食による土壌の機能劣化プロセス」や「(2)野生動物(シカ・イノシシ)による生態系構造の改変が、生態系の機能に及ぼす影響」をテーマとしています。

研究機関や地方自治体、ネイチャーポジティブに関心のある企業との共同研究・生態系保全の実践を推し進めています。メールアドレスよりいつでもご連絡下さい。

参考:シカの増加は森林の炭素貯留機能を半減させた

参考:防鹿柵の設置はブナの成長低下と土壌微生物の多様性低下を防ぐ


受賞

  9

論文

  10

MISC

  1

講演・口頭発表等

  40

担当経験のある科目(授業)

  2

所属学協会

  12

共同研究・競争的資金等の研究課題

  2

学術貢献活動

  4

社会貢献活動

  24

メディア報道

  15

その他

  3
  • 3
    2024年11月
    論文1:ブナの成長の比較に関する研究 掲載誌:Journal of environmental management タイトル: Protection of understory vegetation by deer exclosure fences prevent the reduction of beech growth due to soil erosion 著者: Hayato ABE*, Dongchuan FU, Tadamichi SATO, Yuji TOKUMOTO, Fujio HYODO. Ayumi KATAYAMA DOI:10.1016/j.jenvman.2024.123146 論文2:土壌微生物相の比較に関する研究 掲載誌:Forest Ecology and Management タイトル: Effects of deer-exclusion fences on soil microbial communities through understory environmental changes in a cool temperate deciduous forest in Southern Japan 著者: Yuji TOKUMOTO, Yuki SAKURAI, Hayato ABE, Ayumi KATAYAMA DOI:10.1016/j.foreco.2024.121993 近年、全国的にニホンジカの個体数が増加し、森林生態系を大きく変化させています。強度なシカ採食は、下層植生を減少させ、土壌侵食を加速させます。最近の研究により、これらは樹木衰退や土壌微生物の多様性劣化など、様々な生物群集にも悪影響を及ぼすことが分かってきました。強度なシカ採食への対策として、各地で防鹿柵の設置が進んでいます。しかし、防鹿柵が下層植生以外の生物群集の保全にも役立つかは情報が不足しています。九州大学、宮崎大学、岡山大学からなる研究グループは、熊本県白髪岳のブナ林に設置された防鹿柵の内外で、ブナの成長と土壌微生物相を比較しました。ブナの成長量は、年輪解析を通じて比較し、柵外の個体はシカ採食の激化に伴い成長が低下していたのに対し、柵内の個体ではそのような成長低下は見られませんでした。土壌微生物相については、環境DNA分析を通じて比較し、柵内の土壌は真菌類など一部の微生物群の多様性が高い状態にあることが判明しました。これら柵設置による保全結果は、下層植生が土壌侵食を抑制し、ブナの成長に影響する樹木根系の露出や、土壌微生物に影響する土壌の物理化学特性の変化を抑止した結果であることも分かりました。以上の成果は、防鹿柵の設置が樹木衰退や土壌微生物相の劣化の防止にも有効なことを意味します。ブナの成長に関する研究成果は2024年11月1日に国際学術誌「Journal of Environment Management」で、土壌微生物相に関する研究成果は2024年5月30日に国際学術誌「Forest Ecology and Management」で公開されました。
  • 3
    2024年5月
    掲載誌:Forest Ecology and Management タイトル: Reduction in forest carbon stocks by sika deer-induced stand structural alteration 著者: Hayato ABE *、Tomonori KUME、Ayumi KATAYAMA DOI:https://doi.org/10.1016/j.foreco.2024.121938 森林生態系は二酸化炭素の吸収し、蓄えることで気候変動緩和に貢献することが期待されています。しかし、日本の多くの天然林では現在、個体数の増加したニホンジカの植生採食が深刻化しており、下層植生の減少や不嗜好性植物への置き換わりが生じています。また、樹木の枯死によって生じたギャップ地(※3)では稚樹の更新が阻害され、裸地化しています。しかし、これらのような森林構造の変化が森林の炭素蓄積量にどのような影響を与えるのか明らかになっていませんでした。九州大学大学院生物資源環境科学府 博士後期課程の阿部隼人氏、九州大学大学院農学研究院の片山歩美准教授、久米朋宣教授らの研究グループは、シカの植生採食が長期的に続く九州大学宮崎演習林の山岳林でフィールド調査を行い、シカによる森林構造の変化が森林の炭素蓄積量をどの程度減少させるのか計測しました。その結果、宮崎演習林の天然林を構成するブナやモミの針広混交林が、シカに不嗜好なアセビの灌木林や、ギャップ地に変化することで、生態系内に蓄えられた炭素が最大49%減少することが明らかになりました。またこの炭素蓄積量の減少は、稚樹の更新阻害によって中~大型の上層木が減少したこと、また下層植生劣化に伴い生じた土壌侵食によって林床に堆積する植物遺体や土壌有機物が流亡したことが原因であると考えられました。本研究結果は天然林の保全や生態系サービスを維持するために、シカの過剰な植生採食をコントロールする必要性を提示しています。 本研究成果は、2024年5月10日に国際学術誌「Forest Ecology and Management」のオンライン速報版で公開されました。
  • 3
    2023年10月
    掲載誌:Catena タイトル: Soil erosion under forest hampers beech growth: Impacts of understory vegetation degradation by sika deer 著者: Hayato ABE *、Tomonori KUME、Fujio HYODO、Mimori OYAMADA、Ayumi KATAYAMA DOI:10.1016/j.catena.2023.107559 近年、⽇本の多くの天然林では個体数の増加したニホンジカの植⽣採⾷に伴い下層植⽣が減少しています。下層植⽣の減少は⼟壌侵⾷を加速させ、樹⽊の根を地上に露出させますが、これまで下層植⽣消失により発⽣した⼟壌侵⾷が樹⽊の成⻑に与える影響は明らかではありませんでした。九州⼤学⼤学院⽣物資源環境科学府 博⼠後期課程の阿部隼⼈⽒,九州⼤学⼤学院農学研究院の⽚⼭歩美助教、岡⼭⼤学学術研究院⼤学院環境⽣命⾃然科学学域の兵藤不⼆夫教授らの研究グループは、シカの植⽣採⾷が⻑期的に続く九州南部のブナ林で、⼟壌侵⾷と樹⽊成⻑の関係を調査しました。その結果、⼟壌侵⾷の指標である根系の露出程度が⾼いブナ個体ほど、毎年の着葉量や幹の成⻑量が低いことが明らかになりました。ブナの成⻑低下は本地域でシカが増加し、下層植⽣が減少・消失した時期から⽣じていることが年輪解析から分かりました。また年輪試料の炭素安定同位体を分析することで、成⻑低下が根の露出に伴う⽔不⾜に起因する可能性が判明しました。ブナの成⻑低下は地⾯を覆い⼟壌侵⾷を軽減する落葉・落枝の減少に繋がり、さらなる⼟壌侵⾷とブナの成⻑低下を引き起こす負のスパイラルになっている可能性があります。森林を構成する樹⽊の成⻑低下は将来的な森林の劣化や荒廃に繋がる恐れがあることから、本研究結果は天然林の保全や⽣態系サービスを維持するために、シカの過剰な植⽣採⾷をコントロールする必要性を提⽰しています。