共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2020年3月

ゲージ場の量子論における赤外構造の研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
19J10588
体系的課題番号
JP19J10588
配分額
(総額)
1,700,000円
(直接経費)
1,700,000円
(間接経費)
0円

従来の解析においてS行列が赤外発散する原因として、電磁相互作用や重力相互作用は力の到達距離が無限大である長距離力であるのにも関わらず、遠距離での素粒子の相互作用を無視し、散乱解析における素粒子の漸近状態を自由粒子として取り扱っていることが考えられる。従って、私たちは素粒子の散乱現象における漸近状態に長距離相互作用の効果を取り入れることで赤外発散が生じないS行列の構成を図る研究を行った。
量子電磁力学において、赤外発散が生じないS行列に対する正しい漸近状態の候補としてFaddeev-Kulish(F-K)のドレス化状態が知られていたが、F-Kのドレス化状態はゲージ不変でないという問題があった。始めに、私たちはこの問題の解決を行った。従来の解析においてF-Kのドレス化状態のゲージ不変性の条件としてGupta-Bleuler条件が用いられていた。私たちはこの条件には相互作用の効果が正しく取り入れられていないことを明らかにし、相互作用の効果を取り入れた改良された(BRST)条件を導出した。さらに、F-Kのドレス化状態が導出した新しい条件の解であることを示すことでF-Kのドレス化状態がゲージ不変な状態であることを明らかにした。また、F-Kのドレス化状態に対する漸近対称性の電荷の作用を調べることで、F-Kのドレス化状態は電子が相対論的クーロン場に囲まれた状態であることを明らかにした。さらに、ドレス化状態間のS行列に対する拘束条件として漸近対称性に関する電荷の保存則を導いた。
これらの研究結果はF-Kドレス化状態の物理状態としての性質の良さ、数学的な整合性を裏付けるものであり、今後の赤外発散が生じないS行列の構成の研究の基礎となるものと期待できる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19J10588
ID情報
  • 課題番号 : 19J10588
  • 体系的課題番号 : JP19J10588

この研究課題の成果一覧

受賞

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