MISC

2011年

腹臥位からの体幹伸展位における脊椎可動域のMRI解析

理学療法学
  • 畠昌史
  • ,
  • 竹井仁
  • ,
  • 妹尾淳史
  • ,
  • 宇佐英幸
  • ,
  • 小川大輔
  • ,
  • 松村将司
  • ,
  • 市川和奈
  • ,
  • 見供翔
  • ,
  • 渡邉修

38
0
開始ページ
ROMBUNNO.OI2-001
終了ページ
AaOI2001
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2010.0.AaOI2001.0
出版者・発行元
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION

【目的】<BR> 健常女性を対象に、MRI (Magnetic Resonance Imaging)を用いて、腹臥位からの体幹伸展位における下部胸椎・腰椎椎間関節、腰仙関節、仙腸関節の可動域を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】<BR> 対象は健常女性20名(平均年齢20.6歳)で、身長と体重の平均値(標準偏差)は157.3(4.2)cm、50.1(4.5)kgだった。測定条件は、1)腹臥位・2)腹臥位からの軽度体幹伸展位(握りこぶしを重ねてその上にあごを乗せた肢位:以下、軽度伸展位)・3)伸展腹臥位(puppy position:以下、PP)の3肢位とした。MRI装置(PHILIPS社製Achieva 3.0T)を用い各肢位のT2強調矢状断像を撮像した。得られた画像から次の項目について、画像解析ソフトImage J 1.42を用いて計測した。1)各椎間角度:第11胸椎~第1仙椎の各上位椎骨に対する相対的傾斜角(以下、Th10/Th11~L5/S1)、2)腰仙角:第1仙椎上面と水平面とのなす角(以下、L角)、3)左右骨盤傾斜角:後上腸骨棘と恥骨結合を結んだ線と水平面とのなす角(以下、左右PI角)。さらに軽度伸展位・PP条件の各項目について、伸展方向を正とした腹臥位からの角度変化量を算出した。椎間角度変化量について、分節と肢位を2要因とした二元配置分散分析を実施した後、分節間の差を比較するため各肢位内で多重比較法(Tukey HSD)を実施した。また骨盤・仙腸関節の動きについて、L角と左右PI角の角度変化量の差をみるため、部位と肢位を2要因とした二元配置分散分析を実施した。全ての検定で有意水準は5%とした。統計ソフトにはPASW statistics18を使用した。<BR>【説明と同意】<BR> 各対象者に研究内容について十分説明を行い、書面にて研究参加の同意を得た。なお本研究は、首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理審査委員会の承認(承認番号09049)を受けて実施した。<BR>【結果】<BR> 軽度伸展位における各角度変化量[°]の平均値±標準偏差は、L5/S1:-0.1±2.9、L4/5:-0.9±2.2、L3/4:1.9±2.5、L2/3:1.7±2.3、L1/2:1.6±2.0、Th12/L1:1.3±1.5、Th11/12:2.2±1.5、Th10/11:0.8±2.4、左PI角:-0.05±2.2、右PI角:-0.07±2.1、L角:0.4±3.6だった。PPではL5/S1:0.5±4.4、L4/5:2.4±3.7、L3/4:3.0±3.5、L2/3:3.5±2.6、L1/2:4.5±2.2、Th12/L1:2.6±2.4、Th11/12:2.7±2.0、Th10/11:1.0±2.9、左PI角:-0.1±2.3、右PI角:-0.1±2.9、L角:-0.4±4.1だった。分節間の比較では、軽度伸展位においてL3/4・L2/3・L1/2・Th12/L1・Th11/12がL4/5に比べて有意に伸展した。PPではL1/2がL5/S1・Th10/11よりも有意に伸展した。また軽度伸展位・PPともにL角と左右PI角の間に有意差はなく、仙腸関節の動きは認めなかった。<BR>【考察】<BR> 軽度伸展位ではL4/5が体幹伸展運動に寄与する割合は小さいが、PPではL4/5は上位分節と同様に,伸展したととらえることができる。またどちらの条件も、腰仙関節の角度変化量は非常に小さい傾向にあり、仙腸関節に関しては動きが認められなかったことから、腰仙関節・仙腸関節に対する力学的ストレスは僅かであることが示唆された。従って、腹臥位からの体幹伸展において、軽度伸展位では主にTh11/12からL3/4までが先行して伸展し、PPまで体幹伸展程度が増加するとL4/5にも伸展方向の動きが伝播してくるという運動学的特性が確認できた。立位からの体幹伸展運動を分析している先行研究では、腰椎伸展に加えて腰仙関節・仙腸関節を含めた骨盤帯、ならびに股関節が関与することが報告されている。しかし今回は腹臥位からの体幹伸展位の解析であり、骨盤帯の腹側への空間的位置変化が制限されたため、骨盤帯自体の変化ならびに下部腰椎への影響は小さく、主に頭側から尾側に向かって伸展運動が波及したと推測される。臨床においては、仙腸関節・腰仙関節の動きを抑制し、上位腰椎椎間関節の動きを選択的に獲得させるための方法として応用できる可能性がある。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 腹臥位からの体幹伸展位について、椎間関節の可動域や仙腸関節の可動性に関する報告は少ない。本研究は、目的とする脊椎分節を考慮して運動療法や治療肢位を選択したり、ADL指導をしたりするための基礎的資料になるという意義があると考える。<BR>

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2010.0.AaOI2001.0
J-GLOBAL
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201102249654064421
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005016398
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2010.0.AaOI2001.0
  • ISSN : 0289-3770
  • J-Global ID : 201102249654064421
  • CiNii Articles ID : 130005016398
  • identifiers.cinii_nr_id : 1000000299992

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