MISC

2017年4月

歩行時の体幹動揺と頭部動揺の計測とその評価 モーションセンサを用いた計測評価

理学療法学
  • 柊 幸伸
  • ,
  • 中村 浩
  • ,
  • 川崎 翼
  • ,
  • 山田 洋一
  • ,
  • 平野 正広
  • ,
  • 兎澤 良輔
  • ,
  • 勝木 員子
  • ,
  • 清水 菜穂

44
Suppl.2
開始ページ
P
終了ページ
KS
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2016.0590
出版者・発行元
(公社)日本理学療法士協会

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>歩行時の重心移動や下肢から伝わる衝撃による変位や動揺は,下肢や体幹による緩衝作用で減衰される。加齢による筋力低下やバランス能力の低下は,歩行時の体幹動揺の増加の要因となり,頭部動揺および視線の動揺をもたらし,転倒リスクの1つとなる。したがって,歩行時の体幹動揺の制御能力の評価が重要であり,その評価手法の確立が必要と考える。</p><p></p><p>本研究の目的は,歩行時の体幹および頭部の動揺をモーションセンサを用いて評価し,その特徴を明らかにすることであった。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>被験者は地域の介護予防事業に参加する高齢者43名(75.6±6.4歳)であった。計測にはモーションセンサを3セット用い,下部体幹,上部体幹,頭部に装着し,通常速度と努力速度の歩行を10秒間計測した。計測データより5歩行周期分のデータを抽出し,各部の変位幅と軌跡長の平均値を分析対象とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>歩行時の重心動揺の左右方向の変位幅は,通常速度,努力速度ともに下部体幹が最も大きく,それより上部では順次小さくなっていた(通常速度の下部体幹:47.0±16.2mm,頭部:30.0±11.3mm;努力速度の下部体幹:49.1±20.1mm,頭部:25.7±12.0mm)。下部体幹と上部体幹,下部体幹と頭部の変位幅には有意な差を認めた。前後方向の変位幅も同様の傾向を示し(通常速度の下部体幹:30.2±8.4mm,頭部:15.2±8.1mm;努力速度の下部体幹:30.5±8.8mm,頭部:12.3±7.0mm),通常速度での下部体幹と上部体幹,上部体幹と頭部の変位幅に有意な差を認め,努力歩行では各部位間に有意な差を認めた。上下方向の変位幅は両歩行速度ともに各部位間で差はなかった。</p><p></p><p>歩行時の重心動揺の水平面上の軌跡長は,通常速度,努力速度ともに下部体幹が最も長く,それより上部では順次短くなっていた(通常速度の下部体幹:145.2±42.0mm,頭部:80.3±27.1mm;努力速度の下部体幹:156.4±49.3mm,頭部:68.9±28.6mm)。下部体幹と上部体幹,下部体幹と頭部の変位幅には有意な差を認めた。通常速度歩行時の前額面および矢状面の軌跡長は各部間で差を認めなかった。努力速度歩行時の前額面および矢状面の軌跡長は下部体幹と頭部の間でのみ差を認め,下部体幹の軌跡長が有意に長かった。</p><p></p><p>通常速度と努力速度間の頭部の重心動揺の比較では,左右と前後の変位幅,水平面上の軌跡長に差を認め,いずれも努力速度で有意に小さな値を示した。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>歩行時に発生する体幹の重心動揺は,頭部に伝わる過程で減衰していた。努力速度歩行時の頭部の左右および前後変位幅は通常速度歩行時よりも小さく,重心動揺の減衰作用は早い歩行速度でより大きく作用すると考えた。上下方向の変位幅は頭部に伝わる過程での減衰は少なく,視線の上下動揺は制御することが難しいと考えた。</p><p></p><p>本計測手法でその能力を評価することは,疾患や加齢に伴う動的バランス能力の評価につながり,転倒リスクの評価の1つとなると考えた。</p>

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2016.0590
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005608608
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2016.0590
  • ISSN : 0289-3770
  • 医中誌Web ID : 2018259285
  • CiNii Articles ID : 130005608608

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