講演・口頭発表等

2014年

SfMの歴史災害資料への適用と可能性:―石碑文字列の判読と震災遺構アーカイブの 試み―

日本地理学会発表要旨集
  • 鈴木 比奈子
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  • 内山 庄一郎
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  • 井上 公

1.はじめに SfM(Structure from motion)などの画像処理をベースとした三次元形状復元技術や撮影位置推定技術を用いて、デスクトップPCでも写真から三次元モデルを生成することができるようになった(内山ほか、2014)。地域の過去の自然災害を知るうえで、歴史災害資料の活用は欠かせない。しかし、屋外の災害記念碑や災害遺構は日々風化が進み、時に失われる。これらについてデジタルカメラで撮影しSfMで三次元モデルを作成することによって、効率的な歴史災害資料の解析やアーカイブへ活用できる可能性がある。本稿では、石碑や複雑な立体物の三次元モデル化とその活用可能性について検討する。   2.歴史災害資料のSfM処理とその結果 対象物に対し、視差を与えながら撮影を行い、SfM技術を用いて三次元モデリングを生成した。本稿では、汚れや風化によって判読が難しい状態にある古い石碑に刻まれた文字、および複雑な立体形状の石像について実施した。 2.1 碑文の再現 災害記念碑は地域が過去に経験した災害の実績を後世に伝える、重要な災害資料のひとつである。従来は写真撮影や拓本により災害記念碑に刻まれた情報をアーカイブしていたが、写真では表面情報を明瞭に読み取ることが難しく、拓本では接触型のアーカイブ方法であるため対象物を劣化させる恐れがある。 対象物は1927年に建立された千葉県野島埼厳島神社の境内にある関東大震災の災害記念碑である。図1の上部は対象とした石碑とその周辺の様子である。表面に刻まれた文字列は深さ5mm程度で、苔の繁茂や風化作用によって読み取りが難しくなりつつある。碑文を再現するために石碑表面から60cm程度離した状態でカメラを保持し、石碑表面に対して平行移動しながら158枚の写真を撮影した。 図1の下部左は撮影した写真から生成した石碑のオルソフォト、中央が石碑表面に対し陰影処理を行った状態、右は陰影処理後に判読した文字列である。三次元モデル化によって、表面の汚れの影響を大幅に軽減することが可能となった。また陰影処理によって、非常に明瞭に文字列が判読できる状態になった。 2.2 立体物の三次元モデリング 図2上部の石像は、前項の石碑が立つ厳島神社の拝殿前、右手にある吽(うん)型の狛犬である。設置時代は不詳であるが、江戸時代中期の作と推定される。狛犬のサイズは鎮座する足元から頭部までの高さが約70cmである。この石像にカメラを向け70cm程の距離を保ちながら、螺旋を描くように頭部から足元にかけて133枚の写真を撮影した。モデリングした結果を図2下部に示す。ほぼ実物に近い立体物に見え、穴のある立体物や複雑な表面形状であっても、非常にリアルに再現できることが示された。粘土で造形したような石像表面の複雑な凹凸も再現している。 この石像の例によって、穴の開いた複雑な立体物の三次元モデリングが可能であることが示された。これを自然災害により被災した構造物などへ適用し、震災遺構の三次元モデルをアーカイブできる可能性がある。   3.今後の展望 災害記念碑をはじめとした歴史災害資料や震災遺構は、日々風化が進み、情報が失われている。そういった貴重な災害情報の収集や、震災遺構のアーカイブなどにSfMを適用し、災害資料の収集に活用したい。

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005473846
CiNii Resolver ID
http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000347157063