講演・口頭発表等

2015年

自然災害という地域特性:災害事例の収集と発信

日本地理学会発表要旨集
  • 鈴木 比奈子

. はじめに 過去の自然災害の事例を知り、その状態を復元することは地域における災害の特徴と傾向を捉えるうえで欠くことのできない基本の情報である。 筆者は文部科学省所管の独立行政法人防災科学技術研究所に所属する契約研究員である。地域に散在する災害の記憶である災害資料を用いて、過去の災害事例の収集と自然災害事例のデータベースを構築し、ハザード・リスク評価や地域の防災対策の立案に資するための情報を提供している。<br>. 災害資料の収集と過去の自然災害発生状況の整理 地域の自然災害を知るうえで、自然災害の記録、災害資料は欠かせない。ところが自然災害の記録は災害発生直後より収集を開始しないと加速度的に失われる。そのため発生直後から現地調査を実施して、災害資料の収集を行っている。収集した災害資料は長期保存に資するほか、資料から過去の自然災害による被害の発生状況を明らかにすることにより、当時の災害の規模や、地域が潜在的に抱える災害に対する脆弱な環境を示す情報となる。たとえば、災害写真から被災箇所を同定し現在の様子と比較することで、地域のもつ過去の災害経験を明らかにし、今後発生の可能性がある自然災害を示す情報となる。 <br> 最近は、複数の写真から3次元モデルを構築するSfM(Structure from motion)を用いた資料の収集と解析を試行中である。SfMの活用例として、災害記念碑の判読が挙げられる。災害記念碑は地域の自然災害による被害を伝承する貴重な災害資料である。記念碑の大半は屋外に設置され、風化が進行し碑文の目視が難しい場合がある。SfMを用いて三次元モデルを構築することにより、文字の判読が可能となる。判読が容易なため、過去の被害状況を的確に把握することが可能である(図1)。<br>3. 災害事例データベースの構築と整備 このように過去の災害資料は、欠くことのできない情報であるが、日本全国の過去の災害事例は膨大であり、資料の形態も様々である。そこで防災科研では、日本全国で発生した過去の自然災害事例を網羅的に収集し、統一した形式で災害事例を共有する「災害事例データベース」を構築している(図2)。データベースは、「いつ」、「どこで」、「どのように」、「いかなる被害」が発生したのか、という自然災害の基礎的な情報を、約270項目に分類し、入力している。災害事例の出典は、全国地方自治体の地域防災計画や市町村誌である。 構築した災害事例データベースは、災害の概要をとらえやすいよう帳票で表現するほか、Web-GISなどを用いて、地理情報としての提供を行う。<br>4. 自然災害から地域特性をとらえる <br> 地図によって情報を共有する地理学は、他分野と連携を取ることが容易である。災害発生時には専門分野の枠にとらわれず、発生地域の特徴を空間的に把握し、それによって明らかになった災害特性を地理情報として提供することが可能である。地理学出身者は、より人々の生活に身近な方法や情報で、防災対策の提案ができるのではないだろうか。

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005481634
CiNii Resolver ID
http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000347185886