基本情報

所属
国立極地研究所 国立極地研究所 研究教育系気水圏研究グループ 助教、極域データセンター兼任
総合研究大学院大学
学位
博士(環境科学)(北海道大学)

通称等の別名
Hira
J-GLOBAL ID
200901016386213714

外部リンク

研究課題と活動状況: 大気中に水蒸気として存在する水の一部は凝結や昇華によって雨や雪となり降水として地表面(海洋や陸地)に移動する。地表面からは蒸発によって再び大気中に水が移動する。大気を含む地球表層ではこのような水循環が行われている。極域では降水量および蒸発量はともに少ない。循環する水の量が少ない主要因は低温のために大気中に存在し得る水蒸気量が地球上の他の地域と比べて最も少ないことである。それでも、長い時間を掛けて南極氷床のような巨大な氷の塊を作り上げている。
水循環に関わる極域の気象過程には、中緯度や低緯度とは異なる興味深い現象がある。地上から1000m程度までの下層には気温逆転層(下方に向かって気温が低下する大気層)が発達し、その中で形成する小さな氷の結晶による降水(ダイヤモンドダスト)が冬季にはほぼ絶え間なく続く。南極氷床の涵養(氷床への水の供給)は、このダイヤモンドダストが大きく寄与していると長い間考えられてきたが、近年その認識は大きく変わりつつある。時折発生するブロッキング現象や発達した総観規模擾乱に関連して低緯度側から大量の水蒸気が一気に(1日程度で)持ち込まれ降水を起こしていることが明らかになり、年間に10回程度発生するこのようなイベントが総降水量の半分程度をも担っていることが内陸域の多くの拠点観測から分かってきた。
このような極域の水循環およびそれに関わる大気循環の変動を、地域規模~全球規模、イベント~年々変化までの広い時空間を対象として明らかにしようとしている。研究の推進にあたっては、南極観測隊でのフィールド観測、及び昭和基地における衛星データ受信を実施するとともに、国際的に共有されている衛星データアーカイブや全球大気客観解析データ等を利用している。観測データの理論的考察を進めるために数値モデル実験を実施している。また、北極域における研究にも参画している。
さらに、極域・寒冷域の研究コミュニティを広げることを目的に、気象学会の中に極域・寒冷域研究連絡会を組織しその運営を共同で担っている。極地研究所等で実施される各種シンポジウム、論文誌の編集やレビュー、および研究成果の社会還元のための極地研究所南極北極科学館展示・ホームページ編集に協力してきた。

主なフィールド観測歴:
第38次南極地域観測隊越冬隊(ドームふじ基地、1996.11-1998.3)
第48次南極地域観測隊夏隊(S17航空オペレーション、2006.12-2007.3)
第56次南極地域観測隊夏隊(しらせ船上/昭和基地/S17拠点、2014.12-2015.3)
第58次南極地域観測隊夏隊(しらせ船上/昭和基地/S17拠点、2016.12-2017.3)
第59次南極地域観測隊越冬隊(しらせ船上/昭和基地/S17拠点/冬季中継拠点観測旅行、2017.12-2019.3)
ノルウェー・NyAlesund滞在観測(1995/96冬季、1998/99冬季、1999/2000冬季)
北海道・陸別町降雪観測(2012年-現在)
ヤクーツク降雪観測(2012-現在、GRENE北極事業で立上げ)
アラスカ・PFRR降雪観測(2015-現在、GRENE北極事業で立上げ)

論文

  43

MISC

  38

書籍等出版物

  12

講演・口頭発表等

  132

社会貢献活動

  50

その他

  1
  • 南極氷床の涵養・消耗をはじめとする極域の大気及び雪氷圏における水循環を研究することは地球の気候システムの理解の一翼を担うと考えている。極域は、人間の生活圏から離れていることや低温環境のため、現在でも観測データが他の地域に比べて乏しい。特に、降水量や水蒸気量の観測データを得ることは重要な課題である。 1997年に南極観測隊に参加し、内陸ドームふじ基地において越冬観測を行い、ブロッキング現象発生時の内陸域の天候変動を明らかにし、ブロッキングと惑星規模波動との関連を議論することができた。2007年に氷床縁辺部から海洋上にかけての航空機観測を行い、エアロゾルの広域空間分布を取得した。このデータをもとにカタバ風がその末端部で物質輸送に果たす新しい視点を得つつある。また、南極氷床の頂上域における気温逆転層の構造や季節的変化についての議論を進めている。 新しい知見を得るために、降雪量観測の課題の克服、無人航空機の気象観測への利用に取り組んでいる。降雪量観測の精度向上を目指したWMO(世界気象機関)主導の国際的研究プログラム:SPICE(個体降水比較観測計画)に日本側の観測拠点代表の一人として承認され参画している。データ解析においては、数値モデルにより南極氷床上の接地気温逆転層を精度よく再現し、水循環機構についての理解を深めようとしている。