共同研究・競争的資金等の研究課題

2007年 - 2009年

骨学的形質を用いた獣脚類の呼吸器系進化の解析~生物進化と環境変動の対応を探る試み

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
07J07439
体系的課題番号
JP07J07439
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
2,700,000円
(直接経費)
2,700,000円
資金種別
競争的資金

まず、前年度までに集めた中生代獣脚類の胸郭骨格に関するデータをワニや鳥類の胸郭変形運動のX線動画(Leon Claessens博士(College of the Holy Cross, Worcester, MA)のデータ)と比較し、胸郭の動きと関節の関係性について確認を行った。ここで行った議論は、2010年10月にピッツバーグで開催される古脊椎動物学会におけるシンポジウムにおいて、共著(Claessens&Hirasawa)で発表する予定である。7月には、フィールド博物館(Field Museum of Natural History, Chicago)およびシカゴ大学Paul Sereno研究室を訪問し、化石標本の調査を行った。この中で、大型獣脚類の肋骨表面に筋痕を確認することができた。現生主竜類の筋の配置から復元すると、これらの筋痕は肋間筋系に対応する。これにより肋骨に対する筋の向きが分かり、胸郭内での肋骨の傾きを推定することが可能になった。続いて、肋骨と椎骨の関節における回転軸の方向データと肋骨の形態を用いて、胸部肋骨を持たない(肋骨-胸部肋骨関節がない)獣脚類の胸郭変形運動をxyz座標上で表せる計測、計算方法を開発し、実際に計算を行った。これにより関節の形態を基にした定性的な議論に終始していた換気ポンプの性質に、定量的な評価が与えられるようになった。その結果、Tyrannosaurus、Allosaurus、Majungsaurusの胸郭変形運動では胸郭の後方部分は,前方部分に対して大きな容積変化を生み出してはいなかったと復元された.したがって、これらの獣脚類は,胸郭変形運動のみでは、現生鳥類に見られる後方の気嚢に吸気を引き込む換気メカニズムを成立させることはできなかったと推定される。これにより、気嚢の獲得と鳥類型呼吸器の確立の間にはギャップがあり、鳥類型換気メカニズムは胸部肋骨を獲得した後期ジュラ紀以降に成立した可能性が高いと考えられる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-07J07439
ID情報
  • 課題番号 : 07J07439
  • 体系的課題番号 : JP07J07439