共同研究・競争的資金等の研究課題

2008年 - 2009年

蛍光性希土類錯体を用いた新しいタンパク質認識システムの開発

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
08J03682
体系的課題番号
JP08J03682
配分額
(総額)
1,200,000円
(直接経費)
1,200,000円

まず,希土類イオンに対して強い錯形成を示すDOTAを基本骨格とし,タグ認識部位としてdi(2-picoryl)amine(Dpa)部位を二つ導入したテルビウム錯体,DDTbを合成した.この化合物は,以下のメカニズムでタグ認識を行う.希土類イオンはそれ自身吸光係数が非常に小さいため,発光を誘起するには希土類イオンにエネルギー移動を起こすアンテナとなる適切な分子が近傍に存在しなければならない.すなわち,DDTbそのものは無蛍光であるが,タグ中の適切な位置にアンテナ分子を配置しておけば,タグ結合時のみTb^<3+>からの発光が観測されるようになる.本研究においては,タグ候補として四つのモデルペプチド,D8W1,D8A2W1,D8A4W1,D8A1W2を合成し,これらペプチドとDDTbの亜鉛錯体であるDDTbZn2との結合に関する各種パラメータを求め,それらの知見を元にタンパク質への応用を試みた.各種ペプチドに対しDDTbZn2を加えていったところ,トリプトファン由来の蛍光の減少とともにTb^<3+>由来のの発光強度の増大が観察され,一当量で飽和したことからペプチドとDDTbZn2が1:1の比で結合していることがわかった.今回用いた4つのペプチドの中ではD8A4W1が最も大きな蛍光増大を示した.また,蛍光測定,マイクロカロリメトリーによりDDTbZn2と各ペプチドとの結合解離定数は150~300nM程度であることがわかった.さらに,glutathione S-transferase(GST)にD8A4W1を導入したタグ融合タンパク質,GST-D8A4W1を調製し,DDTbZn2との結合実験を行ったところ,タンパク質中においてもタグに特異的に蛍光応答を示すことがわかった.さらに,本検出システムは細胞破砕溶液中,すなわち様々な細胞内在性物質存在下においてもタグを選択的に認識し,タグ融合タンパク質を特異的に検出でき,その蛍光強度が定量的であったことから,本システムは様々なタンパク質の発現やその存在を定量的に検出するあらたなシステムになりうることが示唆された.

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-08J03682
ID情報
  • 課題番号 : 08J03682
  • 体系的課題番号 : JP08J03682