共同研究・競争的資金等の研究課題

2016年4月 - 2020年3月

嗅覚神経細胞における感度モジュレーションの分子メカニズム解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
16K08495
配分額
(総額)
4,810,000円
(直接経費)
3,700,000円
(間接経費)
1,110,000円

本年度は、研究課題のメインテーマである「嗅覚感度モジュレーションの分子メカニズム解明」の中でも、「匂いを感じるときの嗅線毛内の分子ダイナミクス解析」について、更に詳細な検討を進めた。そもそも「匂いを感じる」ための分子機構は、匂い分子の持つ化学的な情報が嗅細胞線毛に局在して高密度に発現しているCNGチャネルとCl(Ca)チャネルの連続的な開口により電気信号へと変換されることが第一段階となる。その際、セカンドメッセンジャーであるcAMP・Ca2+の挙動は生体電気信号変換において、信号発生に影響を与える重要な要素の1つである。そのため、嗅細胞の線毛内のセカンドメッセンジャー分子の数(濃度)を自由に制御する実験系を用いて、直径100nmの線毛内の分子動向を明らかにした。その際、線毛の微細構造に由来する実験技術的な困難を克服するために以下の技術を組み合わせたシステムが必要であった。1) 微細構造体の可視化, 2) 線毛へのケージド化合物導入と光解離による電流発生システム, 3) チャネル電流測定のためのパッチクランプシステム, 4) 単離細胞への匂い物質投与システム。しかし、研究室移転や、移転後の北大阪大地震による実験セットアップの破壊と再構築に時間がかかり、結果的に進度が遅れたことは否めない。特にケージド化合物を使用する実験機器と匂い物質を投与する機器(研究室自作)は1つのPCで制御しており、これら機器の1部や制御プログラムは研究室で作製した自作品で市販品ではないため、修理・調整にかなりの手間と時間を要した。これら機器を同時併用することで「生きた嗅細胞線毛内での分子の実時間挙動」を定量的に調べることを可能とした。本テーマに関する結果はJournal of General Physiology にて論文化した(Takeuchi & Kurahashi, 2018)。

ID情報
  • 課題番号 : 16K08495