2020年4月 - 2025年3月
統合失調症に関連した暴力の心理社会的背景と生物学的基盤の解明と有効な治療法の開発
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
当研究では、これまで、Human brain phenotype consortiumのデータを用いて、暴力の既往のある統合失調症群(VSZ:112例)と暴力の既往のない統合失調症群(NVSZ:243例)、健常者群1265例の、知的機能、認知機能(記憶機能、実行機能、注意機能、言語学習、処理速度、社会認知)、臨床変数、人格特性、社会機能、生活の質(QOL) を比較した。この結果、VSZ群は、NVSZ群と比較して、過去の入院期間が長く、PANSSのfive factor modelの興奮(興奮+敵意+非協調性+衝動性の調節障害)が高く、視覚性記憶が低く、TCI (Temperament and Character Inventory)で評価した自己超越性の人格傾向が強く、週当たりの労働時間(雇用、家事、就学を含む)が短いといった特徴があることを見出し、この結果をJournal of Psychiatric Researchに出版した。また、同じデータセットを用いて、暴力の既往のある統合失調症群(VSZ:72例)、暴力の既往のない統合失調症群(NVSZ:187例)を抽出し、大脳皮質厚・表面積、大脳皮質・皮質下体積を比較した。T1強調核磁気共鳴画像を得て、FreeSurferを用いて大脳皮質厚・表面積、大脳皮質・皮質下体積を算出した。1つの1.5 tesla、 2つの3 tesla MRI scannerで実施し、3コホートの群間差のCohen’s dを算出してメタ解析を行った。この結果、大脳皮質・皮質下体積、大脳皮質厚・表面積にVSZ群、NVSZ群間で明らかな有意差はみられなかった。本研究は単独の研究としては過去最大規模の対象数であり、物質乱用歴のあるものを除外していることから、今回得られた研究結果は重要であると考える。第43回生物学的精神医学会年会にて報告した。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K07959
- 体系的課題番号 : JP20K07959