研究ブログ

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歴史政治問題について考える際の基礎資料

川口が担当している大学院の授業「比較カリキュラムデザイン基礎研究」では、今年度、歴史的正義に関する問題が起こってきた時代の歴史教育カリキュラムのあり方について検討することを目的としています。

前期では、「歴史政治」「歴史的和解」といった概念理解,および世界的な歴史政治の基礎的な状況を把握することを目的としました。授業では『戦争を記憶する』(藤原帰一,講談社現代新書,2001)・『紛争化させられる過去』(橋本伸也・岩波書店,2018)・『歴史認識と歴史和解』(菅英輝・晃洋書房・2020)を読んでいきました(書籍名にリンクを張っておきます)。
授業では、文献を読みながら、世界で歴史政治をめぐりどのような議論があるのかを検討していきました。ここで、その一部を公表いたします。
あくまでも大学院での授業資料ですので、誤りがある場合があります。授業資料・読書ガイドとして用いていただき、研究・論文等で用いる場合は原著を参照いただきますようお願い申し上げます。

何かご意見等ございましたら、川口までお願いします。

※8月8日に,前期の最終発表を行いました。「歴史和解とは何か?」
 発表資料はこちら→ 0808 最終発表スライド【最終版】.pdf

 

1.藤原帰一『戦争を記憶する』講談社現代新書,2001

第1章 2つの博物館ー広島とホロコースト 1章要約.pdf 1章発表資料.pdf

第2章 歴史と記憶の間・第3章 正しい戦争ーアメリカ社会と戦争 2章3章要約.pdf  2章3章発表資料.pdf

第4章 日本の反戦・第5章 国民の物語 4・5章 要約.pdf 4・5章 発表資料.pdf

 

2.橋本伸也(編)『紛争化させられる過去』岩波書店,2018

序章 序章要約.pdf

第1部 「過去」の構築と統制 (特に1章:旧東プロイセンにおけるソ連/ロシアの記憶の政治、第3章:フランスにおける植民地支配の過去と記憶)第1部要約.pdf 第1部発表資料.pdf

第2部 紛争と対話ー「難しい過去」をめぐる二国間・多国間関係(特に第5章20世紀の困難な歴史をめぐるポーランド人と隣人との紛争と対話、第6章過去の政治化と国家間「歴史対話」)第2部要約.pdf 第2部発表資料.pdf

第3部 紛争化させられる過去と歴史家の役割 3部要約.pdf 3部発表資料.pdf 補足資料:10章年表.pdf

 

 

3.菅英輝(編)『競合する歴史認識と歴史和解』晃洋書房,2021

第1章 東アジアの国際秩序の変化と日韓関係 第1章要約.pdf

第2章 日韓関係における歴史問題と安全保障の連動 第2章要約.pdf

第4章 歴史問題の発生メカニズムと和解のプロセス 第4章要約.pdf

第5章 歴史認識をめぐる日韓関係と「被害者ナショナリズム」第5章要約.pdf

第9章 西ドイツの東方政策における対ポーランド関係と人道問題 第9章要約.pdf

第11章 和解のプロセスと「歴史」の多様性 第11章要約.pdf

 

※受講者一覧(6名)

・板野誠(M2・教育学プログラム・教育哲学)

・正出七瀬(M1・教師教育デザイン学プログラム・社会認識教育学)

・村上正龍(M1・教師教育デザイン学プログラム・地理学/地理教育)

・岡井美咲希(M1・教師教育デザイン学プログラム・社会認識教育学)

・村上遥大(M1・教師教育デザイン学プログラム・社会認識教育学)

・首藤慧真(M1・教師教育デザイン学プログラム・地理学/地理教育)

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歴代のゼミ生(広島大学)の論文・報告書題目(2018年度~)

川口が広島大学に着任してから以降のゼミ生の論文題目です。
修士論文・卒業論文・教員研修生報告書の種類に分かれています。


1.修士論文題目

・令和4(2022)年度修了(予定)生

・証言的不正義に対抗する市民育成をめざす社会科単元開発研究ーK.B.Khanの”Implicit Bias Training"を手がかりにー
・家庭におけるエデュケーショナル・マルトリートメントに向き合う社会科単元開発研究ー子どもが声をあげる困難性を乗り越えることを通してー

・令和3(2021)年度修了生

・日本型ホモフォビアへの抵抗をめざした社会科単元開発研究ー個人・制度・社会規範の相対化を軸にしてー

・令和2(2020)年度修了生

・人類史から子どもの歴史像の再構築を促す大観学習への変革―イギリスのBig Picture論を手がかりにして―
・教員志望学生の社会科観の構築過程―「生活世界」を手がかりに―
・真正な民主主義教育としての社会科教育実践ストラテジー―教師-生徒間の非対称的権力関係に注目して―

・令和1(2019)年度修了生

・インクルーシブ社会科の実現をめざした社会科教育実践研究―社会モデルに注目して―

 

2.卒業論文題目

・令和4(2022)年度卒業(予定)生
 
・ポストフェミニズムに対抗する社会科単元開発研究  —「実質的男女平等」の実現を目指して— 

 ・新科目「公共」の実践を公民科教師はどのように捉えているか-教師へのインタビュー調査を通じて-


・令和3(2021)年度卒業生

・ジェンダー問題の当事者化を目指す公民科単元開発研究

・排除されてきた人々の語りを復活させる歴史単元開発研究ージェンダー史による「大きな物語」の解体を目指してー

・若者アスリートに対する学校キャリア教育の改善研究ー「スポーツ社会」を主題とした中学校社会科単元開発を通してー

・GCE-Aレベル歴史における学力構造の特質ー「歴史的思考力」を視点としてー

・海外スタディツアーにおけるグローバル・シティズンシップ育成の​可能性と課題-異文化葛藤から生まれる​自文化アイデンティティへの批判的省察の視点から-​

・令和2(2020)年度卒業生

・論争問題学習の改善に向けた「知的枠組み」の意義―W.C.Parker「公共政策熟議モデル」の議論を中心にー

・博物館の語りを再構築する歴史単元開発―多元主義的参加民主主義社会を目指してー

・「議論型」授業の批判的検討―社会的弱者のエンパワメントの視点からー

・シティズンシップ教育における「遊び」の可能性​―「ぼくらの町」プロジェクトの批判的検討を通して―​

・令和1(2019)年度卒業生

・性規範の相対化をめざした社会科単元開発研究ー性の多様性を主題とした教科横断的な実践を通してー

・平成30(2018)年度卒業生

・社会科を専門としない市民は社会科をどのように捉えているか?

・エンパシーの視点を取り入れた理解型世界史の単元開発

・高校歴史教師を対象とした教科書活用ハンドブックの開発 

・多文化社会における「議論」の意味再検討

  ・社会参加する市民の育成をめざした歴史授業開発研究

3.教員研修生(teacher trainee)報告書題目
・令和3(2021)年度修了

 ・Challenges affecting effective provision of human rights education in secondary schools in Malawi

・令和2(2020)年度修了

・An investigation into authentic assessment practices of social studies teachers in the junior high school in Japan

・令和3(2019)年度修了

・Exploring lesson study: a Comprehension of the Japanese professional development practice to instructional improvement

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欧州評議会のreference framework for democratic cultureについての基礎資料要約(大学院授業)

川口が担当している大学院の授業「比較カリキュラムデザイン発展研究」では、欧州評議会(council of Europe)が作成したReference Framework of Competences for Democratic Cultureを検討し、トランスナショナルなシティズンシップ教育カリキュラムとしての特質と意味を検討することを目的としています。
※なお、ディスクリプタ(コンピテンシーとその規準に関する記述語)の日本語訳については、既に櫻井ほか(2021)で公表されています。

興味深い枠組ですので、授業の過程で取り上げた基礎文献の要約を共有させていただきます。あくまでも大学院での授業資料ですので、誤りがある場合があります。授業資料・読書ガイドとして用いていただき、研究・論文等で用いる場合は原著を参照いただきますようお願い申し上げます。

何かご意見等ございましたら、川口までお願いします。

①  コンピテンスモデルが示されているもの:
Council of Europe (2016) Competences for democratic culture: living together as equals in culturally diverse democratic societies.  (担当:高見・加藤)①の要約.pdf 

② 欧州評議会のEDC/HREのチャーターの進捗状況を検討したレポート
Council of Europe (2017). Learning to Live together. Council of Europe Report on the state of citizenship and human rights education in Europe. (担当:田中・池田):②の要約.pdf

③ reference frameworkの1巻目(文脈、概念、モデル):
Council of Europe (2018a). Reference Framework of Competences for Democratic Culture, Volume 1: Context, Concepts and Model. Strasbourg: Council of Europe Publishing.(担当:野瀬・藤井・吉田):③の要約.pdf

④Council of Europe (2018b). Reference Framework of Competences for Democatic Culture, Volume 2: Descriptors of Competences for Democratic Culture. Strasbourg: Council of Europe Publishing.

⑤Council of Europe (2018c). Reference Framework of Competences for Democratic Culture, Volume 3: Guidance for Implementation. Strasbourg: Council of Europe Publishing.

⑥Council of Europe (2018d). Quality history education in the 21st century: Principles and guidelines. Strasbourg: Council of Europe Publishing.

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学部生・大学院生に関する奨学金・研究資金(2021年度版)

ゼミ生に紹介している大学院生・学部生がとれる研究資金について

1.公益財団法人中央教育研究所 教科書研究奨励金 (例年:4月25日締切)

※令和2年度はD1の久保美奈さん研究代表で、M2の奥村尚さんとの共同研究で採択されました!

1.助成対象:日本および諸外国の学校またはその他の教育機関で使用されている教科書についての様々な研究。2.応募資格:大学院生、大学教員、研究者。個人研究または共同研究
3.交付金額:1件につき20万円。使用費目は自由。

4.交付決定後の責任: 交付対象者は翌年4月25日までに研究成果を10,000~15,000字の論文にまとめる

 

2.教科書研究センター:大学院生の教科書研究論文助成金 (2021年度:8月2日締切)

1.教科書・副読本・教師用指導書・デジタル教材(以下「教科書等」という。)の質的向上と充実を図るため、我が国における教科書等の改善に関する調査研究の推進を目指して大学院生による研究論文作成に助成金
2.助成金額:1件につき10万円(研究論文提出後に交付)
3.論文の最終提出期限:交付決定から1年以内
4.応募資格:助成対象となる研究論文を作成しようとする大学院生で指導教員の推薦を受けたもの

3.サントリー文化財団 「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」 (2021年度:11月11日締め切り)

斬新な発想で取り組む、大きな展望を持った研究であると同時に、学術的、
社会的に広がりのある研究を対象とします。専門領域からの飛躍を目指す若手研究者によるチャレンジ
ングな取り組みを応援します。
・ 原則として、2022 年 4 月 1 日時点で博士前期(修士)課程修了以上 35 歳以下の若手研究者による人
文学、社会科学分野の個人研究を対象とします。
・他機関の助成との併願・同時受給は可能です。
・本年度の助成対象は 15 件程度とします。
・1件あたり 100 万円を上限として、申請額の満額支給を原則とします。
・ 助成期間は 2022 年 4 月 1 日から 2023 年 3 月 31 日までの 1 年間とします。継続申請はできません。

4.公益財団法人マリア財団 研究助成 (2021年度:11月30日)
(1) 幼児・児童教育等に関する研究・実践を行っている個人・団体
(2) 原則として日本国内で研究・実践を行っている者
(3) 過去にこの助成を受けていない者
3.助成額、募集期間
・助 成 額 1 件あたり 10~30 万円以内。年間 90 万円を限度額とする。

5.博報堂 児童教育実践についての研究助成 (2021年度:10月31日)
<対象となる研究>
①「ことばの力」を育む研究 ②国語・日本語教育の諸分野における研究 ③あらゆる学びの場におけることばの教育に関する研究 ④児童教育実践の質を向上させる研究 ⑤多様な場における教育実践の質を向上させる研究
※対象は小・中学生。 ただし、児童教育への反映が明確な場合に限り、幼児教育、高校生に関する研究も可。
<応募資格>
・日本の学校・教育委員会に所属する教育実践に携わる方(例えば教諭、指導主事、相談員、特別支援教育の支援員等。)
・日本の大学・研究機関に所属する研究者(例えば准教授、講師、助教、博士課程の院生等。若手支援のため、教授やそれに相当する職は除く。)
<金額>
・1ヵ年助成:1件につき200万円を限度に助成します。
・2ヵ年助成:1件につき300万円を限度に助成します。

5. 2021年度 公益財団法⼈ハローズ財団 助成⾦
本財団の指定するエリアにおいて、食に関わる社会問題の解決に向けて、食育活動及び研究に取り組む団体であること
(1)1団体当たりの助成限度額10万円
(2) 給付期間 原則1年間 初年度に限り2022年1月~2022年3月

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第4講:「シティズンシップとは何か?」 (担当:小野)

 
発表者:今井・神田・村田 司会者:小野 

①授業の目標 
 本授業は、主にWestheimer & Kahne (2004) “What kind of citizen? The politics of educating for democracy.”を題材とする形で進められた。この論文では、市民にはどのような種類があるかが整理され、「個人として責任を持つ市民」・「参加型市民」・「正義志向の市民」としてカテゴリー化がなされていた。その中でも、Westheimer & Kahne (2004)は、後者2つの市民を評価し、こうした市民を育成する教育が求められていると主張する。 
本論文を踏まえ、授業では、なぜ「参加型市民」・「正義志向の市民」が評価されるのかを理解することができ、実際の授業プランをWestheimer & Kahne (2004)の市民の三類型から分析することができることが目標とされた。 
発表資料→ 20201109発表スライド.pdf


②授業の流れ 
・今井・神田・村田からのシティズンシップ概念の整理と論文全体の要約についての発表 
・再度論文を読解、質疑応答 
・桑原(2017)『高校生のための主権者教育実践ハンドブック』の事例を市民の三類型から分析 
・分析を基にしたディスカッション、発表者からのコメント 
の手順で進められた。 
 
③議論や活動で印象に残ったこと 
 シティズンシップと一口に言っても、様々な定義や語り方があり、どのように解釈すればよいかが難しい。その中で、発表者が歴史的・社会的背景からシティズンシップの概念規定を読み解いていたので、参加者のシティズンシップに対する理解は深まったと思う。実践事例の分析・ディスカッションでも、その理解をもとに議論がなされた印象である。 
 
④次への課題 
「参加型市民」、「正義志向の市民」を育成するために我が国の社会科教育では何ができるのか、何が困難なのか、困難を乗り越える上での他教科、他の教育活動との連携はいかに可能なのかを考えなければならない。日本の社会科教育研究・実践で前提とする目標・内容・方法を根本的に見直すことも必要であるように思える。 

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第3講「デジタル世界の子どもたち」 (報告者:河原)


発表者:安藤・今井・宇ノ木・金原・神田・藤井・村田  司会者:河原 
□目的 
本特講は「共同研究を通して、学校の先生や政策決定者に対してデジタル化の時代に市民性教育はどう変わるべきかを論じること」(シラバスより)を目的としている。 
日本経済新聞が掲載したOECD調査結果1やコロナ禍での教育機関の対応をみると、日本では特に小・中・(高)でのICT活用についての対応の遅れが指摘できる。本特講の前提にある問題意識として、先のような事実そのものよりも、この過程で行われてきた議論自体がエビデンスに基づかない印象論や“大人の事情”によって矮小化されていることが挙げられる。発表担当者たちで行った事前の協議の場においても、デジタル社会での経験やその捉え方が様々であることが確認された。「デジタル・シティズンシップ」を今後議論していく上で、さらには研究室を離れ、年齢や立場を超えた人に向けて具体的な提案していくのであれば、学術性の担保は当然のことながら、私たちが一個人として抱くデジタル社会に対するイメージや感覚、そこでの基本的なスタンスを自覚しておく必要があるだろう。 
そこで、今回はユニセフが調査結果をもとに2017年に発行した『デジタル世界の子どもたち』の購読とグループワークを行った。①デジタル社会が子どもたちにもたらす「機会」と「リスク」を明らかにすること、②受講者のデジタル社会での経験を振り返ること、これら2つを通して本特講の問題意識と前提の共有を図った。 
 


□当日の流れ
 ・発表『デジタル世界の子どもたち』 第3回資料.pdf
 ・質疑・コメント 
 ・グループディスカッション 
 
□質疑・コメント 
〈質疑〉 
・『デジタル世界の子どもたち』について(本書の性格・調査対象国、地域・データ収集方法など) 
・本書が主に取り扱う「デジタル・ディバイド」とは?(1次・2次どちらの扱いが中心なのか) 
・ユニセフの「アクションプラン4・6」に対する言及がない理由 
〈コメント〉 
・デジタル社会の定義とそのための教育の射程策定の必要性 
 
□司会者所見・今後に向けて 
 今回の特講では、子どもたちが生きるデジタル社会の特質が明らかになった。次回以降、そこではどういう“市民”が求められ(5-7講)、教育研究・教育実践はそれにどう応えていくか(9-11講)を明らかにする。今回のディスカッションを通して、デジタル社会に関して受講者がもつ意見や考え方を知ることができた。当然ながら同じような経験や感覚をもつ人もいれば、異なる人もいる。なぜこれらの感覚を共有できた(できなかった)のか、その理由こそ本来もっと問うべきであったが、時間の制約上そこまで議論を深めることができなかった。これらについては各自が今後も行う課題としておきたい。 

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CANADA: The Historical Thinking Project( HTP) に関する基礎資料について

以下の資料については,無断利用はお控えください。
利用される場合は,shinchan.happy@icould.comまで連絡をお願いします。

基礎資料①:HTP における参照基準の構築・普及過程 基礎資料①(HTPの詳細な展開).pdf
基礎資料②:参照基準の変遷 基礎資料②(参照基準の変遷).pdf

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日本の社会科教育実践におけるジェンダーバイアスとその抑圧解消アプローチの先行研究まとめ(20200906ver)

先日,とある会議で,今後,多様な人々(特にマイノリティ)の立場から,社会科教育実践を再考することが重要ではないかという意見がでました。社会科は,現在・未来の社会を形成する公民的資質を育成する教科と位置づけられています。日本社会もグローバル化の中で多様化が進んでおり,従来の「社会」のあり方も変わっています。
こうした視点から,これまでの社会科を批判的に検討した上で,今後の社会の担い手をどのように作っていくか,ということについての示唆がある文献を集めてみました。

なお,特に日本語で日本の社会科に向けて書かれたものを選んでいます。
今回はジェンダーについてです(なお,ばーっと集めたので抜けているものも多いと思います。追加があるよ,というものがあれば是非教えてください!追加していこうと思います。)

 

 

社会科教科書・実践におけるジェンダーバイアスとその解消に関する文献一覧(200906ver)

氏原陽子(1997)「教科書におけるジェンダーメッセージ(1)中学校社会科・公民的分野の数量的分析」『名古屋大學教育學部紀要 教育学科』44(1)91-103.

氏原陽子(1997)「教科書におけるジェンダーメッセージ(2)中学校社会科・公民的分野の質的分析」『名古屋大學教育學部紀要 教育学科』44(2),95-104.

氏原陽子(2008)「教科書の隠れたカリキュラムによって伝達されるジェンダー・メッセージの変遷:中学校社会科・公民教科書及び政治・経済・社会教科書の分析」『桜花学園大学保育学部研究紀要』6,47-60 

梅津正美(2008)「歴史教育における規範反省学習の授業開発ー小単元「近代日本の身体観と国民化ー規範が持つ権力を考える」『社会系教科教育学研究』20

久留島典子. (2010). 「高等学校日本史教科書にみるジェンダー」 『学術の動向』, 15(5), 5_67-5_69.

関友里, 斎藤周 (2019). 「ジェンダーに敏感な視点に立った小学校社会科授業構築の試み」.『群馬大学教育学部紀要. 人文・社会科学編』 68, 51-68.

富永智津子. (2010). 「高校世界史教科書のジェンダー化にむけて」『学術の動向』15(5), 5_58―61.

長野ひろ子. (2010). 「女性史・ジェンダー史の成果は教科書に生かされているか:─日本近世の場合─」『学術の動向』, 15(5), 70-72.

長野ひろ子, & 姫岡とし子. (2011). 『歴史教育とジェンダー 教科書からサブカルチャーまで』. 青弓社.

姫岡とし子. (2011). 「歴史認識・歴史教育とジェンダー」.『学術の動向』, 16(10), 10_48-10_50.

藤瀬泰司(2013)「性同一性障害問題を考える」『中学校社会科の教育内容の開発と編成に関する研究』風間書房。

前村よう子. (2000).「高校社会科授業の中にフェミニズムの視点を取り入れると…(特集 フェミニスト心理学をつくる--癒しと成長のフェミニズム) 『女性ライフサイクル研究』(10), 68-75.

升野伸子, 國分麻里, 金玹辰(2018)『女性の視点でつくる社会科授業』学文社。

升野伸子(2008). 「高等学校公民科 「政治・経済」 教科書の分析--隠れたカリキュラムとしてのジェンダーメッセージ」.『ジェンダ-研究』 (11), 73-89.

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「N.フレイザーから教育を見直そう」セミナーを開催しました

7月17日に大阪大学の皆さん(北山夕華先生と受講生の皆さん)との合同セミナーを開催しました。

昨年度まで行っていた,北山先生たちとの共同研究において,N.フレイザーの3つの正義/不正義の概念「再分配(redistribution)」「承認(recognition)」「参加/代表(representation)」を基に教師教育者の実践を分析し,これはもう一度しっかり読みたいと考え,学生有志と共に4月から読んできました。
今回の会は,今年度Covid-19の影響でオンライン授業が増え,学会等もオンライン開催でなかなか学生の関係構築が難しいだろうという話に北山先生となり,開催したものです。
大阪大学側から2名,広島大学側から2名それぞれ登壇し,発表と質疑を行いました。広大側の発表者とタイトルは次の通りです。

・村田一朗(M1)「N・フレイザー「再配分-承認-代表」概念から見た社会科実践『性別記入欄にXジェンダーを付け加えるべきか』の意義と限界」
・久保美奈(D1)「フレイザーの正義の枠組みは,障害問題に適用できるのか?」

村田さん・久保さん共にどちらも卒業論文・修士論文の内容を新たにフレイザーの概念を用いて再分析を行ったものです。村田さんは教師自体の「承認」の解釈の狭さや,生徒とのずれが明らかになったとしていました。久保さんも,フレイザーの枠組みを用いることで,障害学を基礎とした枠組みの限界性や意義を見直す契機となったと述べています。

オンライン開催。かつ,専門が教科教育と教育社会学ということで,話がかみ合うのかという不安もありましたが,議論も白熱し,双方に見識が深まった良い会になったように思います。越境する対話ができる研究者となるべく,今後も多様な機会を設けていこうと考えています。

※追記:7月22日:広大チームで振り返りをしました。結果を簡単に示しておきます

<気づいた点>
・アプローチの違い 
 ー大阪大学側:不正義状況の分析枠組みとして利用⇔広大側:不正義の改善アプローチの枠組みとして利用
 ー「なぜ,公教育で扱うのか」という前提の有無
・権力関係に敏感であり,安全な環境づくりの重要性 (例:2班 子どもが性教育を拒否した場合にも性教育をするべきか?)

<意義>
・全体としてディスカッションが好きなメンバーが集まっていたこともあり,積極的に対話ができて楽しかった。
・ブレイクアウトセッションの時間が持てたことで,「どのように教育をするか?」といった視点から深く対話できたところがよかった。
・「非フレーム化」など同じ本を読んでいても,注目するポイントや解釈が異なることを知ることができた(より深く読みたくなるきっかけになった)

<課題>
・読み込みが浅かったため,時折概念の解釈に違いがあることはわかったが,それについて議論を深めることが困難であった(もっと,フレイザーの文脈に沿った形で議論したい)
・<代表・参加/representation>についてはもっと議論したい!

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多様性・社会正義×民主主義・シティズンシップ教育に関する研究会(2019.3~)

社会科教育学研究室で多様性や社会正義に関心がある学生が自主的に集まり,関係する文献を読んでいます。
(資料のpdfがついているものは,簡単なレジュメがあるものですが,あくまで自己学習のために作成したものですのでご了承ください。直接引用は避けていただき,文献を読む際の参考資料程度でご参照ください。)
※何か気になった点などあれば,コメントで指摘していただければと思います。

・メイン・メンバー
奥村尚(広島大学大学院教育学研究科・院生)
小野創太(広島大学大学院人間社会科学研究科・院生)
久保美奈(広島大学大学院人間社会科学研究科・院生)
村田一朗(広島大学大学院人間社会科学研究科・院生)
両角遼平(広島大学大学院教育学研究科・院生)・・他多数の学生・院生さんに関わってもらっていました。

第1期(2019年2~3月)
・フレイレ,P. (三砂ちづる訳)(2018)『被抑圧者の教育学』亜紀書房 書籍URL (担当:久保)
・岡野八代(2012)『フェミニズムの政治学』みすず書房 書籍URL (担当:村田)
・アーレント,H.(志水 速雄訳)(1994)『人間の条件』ちくま学術文庫 書籍URL(担当:奥村)
・ビースタ,G.(上野正道訳)(2014)『民主主義を学習する』勁草書房 書籍URL(担当:川口)


※special event  「多様性×社会科教育」読書会

読んだ本:森茂岳雄・川崎誠司・桐谷正信・青木香代子(編)(2019)『社会科における多文化教育』明石書店 書籍URL
関連URL
・川口・両角が参加しました!


第2期(2020年4~7月)
①フレイザー, N. (向山恭一訳)(2013)『正義の秤:グローバル化する世界で政治空間を再想像すること』法政大学出版局 書籍URL

第1章 正義の秤,天秤と地図ー序論 (川口)1章資料.pdf
第2章 グローバル化する世界で正義を再フレーム化すること (村田)
第3章 平等主義の二つのドグマ (小野)
第5章 公共圏の国境を横断すること (久保)
第6章 フェミニズムの想像力を地図化することー再分配から承認,そして代表へ (奥村)
第9章 フレーム化の政治ーナンシーフレイザーと語る【ケイト・ナッシュ&ヴィッキ・ベル】(小野)

②フレイザー, N. & ホネット, A. (加藤泰史他訳)(2012).『 再配分か承認か: 政治・哲学論争.』法政大学出版局.

序文 (村田)
第1章第1節 再配分か承認か──切り詰められた正義の批判 (川口)1章資料 (2).pdf


③ キムリッカ,W (栗田佳泰, 森敦嗣, 白川俊介訳,)(2012).『土着語の政治――ナショナリズム・多文化主義・シティズンシップ』. 法政大学出版局.

序章 (両角)
第1章  マイノリティの権利をめぐる新たな論争 (奥村)
第2章  リベラルな文化主義 (久保)
第4章  人権と民族文化的正義 (川口)


※special event: 「N. フレイザーから教育を見直そう」セミナー (2020.7. 17)
大阪大学の北山先生と学生さんと連携して,N.フレイザーの理論的枠組みから,自分たちの研究テーマを見直し,検討しました。 関連URL

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