2020年4月 - 2023年3月
遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いた有毛細胞障害機構の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
ヒトにおいて遺伝性難聴の原因となる遺伝子が数多く存在することが明らかになってきているが,現在まで根本的な治療方法は存在しない。本研究では難聴遺伝子を欠損した遺伝子改変ゼブラフィッシュを作出して実験を行っている。2021年度は常染色体劣性遺伝形式をとる非症候群性難聴(DFNB16)の原因遺伝子であるSTRCの遺伝子欠損ゼブラフィッシュを用いて研究を行った。CRISPR-CAS9システムを用いた遺伝子改変ではSTRC遺伝子のExon中の特定の配列を標的とし、gRNAを設計した。Cas9タンパクと共に第1細胞期の受精卵へ導入し、成魚になるまで育成した。それらを野生型と交配し、F1世代を作成してゲノム配列を確認すると、標的部位への14塩基の挿入を認めた。ヘテロ変異体のF1世代同士を交配し、F2世代でホモ変異体を得た。このホモ変異体の解剖学的特徴,生理学的特徴について検討した。生後5日目のホモ変異体を光学顕微鏡で観察したが、内耳の構造や耳石の形態などに明らかな差は確認できなかった。またプラスチック包埋のうえHE染色したが、耳石器官の有毛細胞の配列、形態には明らかな差を確認できなかった。光学顕微鏡では聴毛の観察までは不可能であり、免疫染色の追加や電子顕微鏡などでのより詳細な観察が必要と考えている。さらに、水槽内での遊泳行動にも明らかな差は認めなかった。現在、暗所での遊泳行動の評価や、流水や回転などの負荷を加えた上での解析を追加検討中である。結果については,学会にて報告を行った。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K09733
- 体系的課題番号 : JP20K09733