共同研究・競争的資金等の研究課題

2005年 - 2007年

遷移状態解析に基づく多核金属アート塩基の論理的開発と機能性芳香族構築化学への展開

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
05J11953
体系的課題番号
JP05J11953
配分額
(総額)
1,000,000円
(直接経費)
1,000,000円

1、量子化学計算を用いたチロシナーゼの触媒反応機構の解明:信頼性が高く実験系との比較が容易な、酵素類似の銅2核錯体とフェノキシドとのモデル反応について詳細に理論化学的検討を行った。その結果、真の活性種は従来考えられていたペルオキシラジカルや(μ-η^2:η^2)ペルオキシド錯体ではなく、(μ-η^1:η^1)ペルオキシド錯体であることが強く示唆された。さらに、もともと等価である2つの銅原子と酸素原子が、得られた反応過程において、それぞれが非対称で全く異なる役割を果たすことで、反応の遷移状態と生成系の安定化に寄与していることが明らかとなった。これらの検討は実験結果と良く符合し、本錯体はチロシナーゼと同様の反応性を示すことから、本研究で明らかになったこれらの現象は、酵素反応にもみられる普遍的な反応機構である可能性が示唆される。
2、遷移状態解析に基づく多核金属アート塩基の論理的開発と新規有機化学反応の開拓:研究の足がかりとして、開発したアルミニウムアート塩基の機能解析を行った。理論化学計算の結果、水素引き抜き反応において配位溶媒の有無に関わらず、環状遷移状態を経て反応が進行すること、反応に関与する配位子はヘテロ原子配位子の方が速度論的に有利であること、アート錯体の二つの金属の共同効果が反応経路の安定化に寄与していることが判明した。
3、機能性芳香族構築化学への展開:官能基をもつアリルフェニルエーテル誘導体に対し、開発したアルミニウムアート塩基を用いることで、アリル位のα位のみを選択的に官能基化できることがわかった。得られた化合物は、抗炎症薬を中心とした医薬品合成中間体に見られる骨格をもつことから、これらの誘導体合成の一助となりうるのみならず、クライゼン転位を経て高度に官能基化された多置換芳香族アリル誘導体へ導けることが明らかになりつつある。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-05J11953
ID情報
  • 課題番号 : 05J11953
  • 体系的課題番号 : JP05J11953