基本情報

所属
人間文化研究機構 人間文化研究創発センター 研究員(特任助教相当)
同志社大学リサーチ・イノベーション推進機構(都市共生研究センター) 学術研究員
学位
博士(学術)(2023年3月 東京大学)
修士(学術)(2017年3月 東京大学)
学士(教養)(2015年3月 東京大学)

研究者番号
00977803
J-GLOBAL ID
202101011905024758
researchmap会員ID
R000015358

イスラエル/パレスチナ地域を対象に、フェミニズム・クィア理論(ジェンダー・セクシュアリティ研究)、批判的動物研究を専門にしています。

 

博士課程までの研究では、イスラエルの性的少数者の権利と、動物の権利をめぐる動きを経済・政治・思想の三点から比較して分析し、ジェンダー・セクシュアリティ研究で用いられている概念「ホモナショナリズム」を援用する形で「ヴィーガン・ナショナリズム」の概念を導入して理論化しました。

このように、主な研究関心は①性の政治と②動物の政治、③ナショナリズムという三者の関係を見てゆくことです。

 

【1】性の政治とナショナリズム(①と③)

 近代国家の成立以降、性は管理の対象とされ、同性愛者を含む非規範的な性を持つ人々は婚姻制度や軍隊などの国家の制度から排除・周縁化されてきました。それに対し、20世紀後半以降、今日性的少数者(LGBTなど)の権利運動として知られるようになった動きは、この規範の解体と廃止を求めてきました。特に2000年代以降、LGBTの権利の可視化が進むと同時に国家の側からの包摂が表明されるようになりましたが、今度は米国やオランダ、あるいはイスラエルではこの包摂が国家の「民主主義」や「先進性」に結び付けられ、「少数派の権利を侵害する」主に中東イスラーム諸国に対する優位性を主張するナショナリズムの言説につながっていきました。

 特にイスラエル政府は2000年代以降、「自らの国がLGBTフレンドリーである」と国際的に積極的にアピールしてきました。しかしこのアピールは、現在進行中のパレスチナに対する占領と人権侵害を覆い隠す「ピンクウォッシング(同性愛者のシンボルカラーのピンクと覆い隠す、ごまかすという意味のホワイトウォッシュをかけ合わせた語)」であるとしてLGBTの運動内部から批判が上がってきました。

 この問題は「ある権利擁護の主張が、他の権利を侵害するための口実となる」という重大なアポリアを提示しています。ある権利を求める動きがナショナリズムや排外主義に結び付くのはどのようなメカニズムによって起きるのか、という問いについて追っています。

 

【2】動物の政治とナショナリズム(②と③)

  動物の政治とナショナリズムの間の関係性は今日錯綜しています。近代の成立の基礎にあったのは、ヒューマニズム(人間主義)、すなわち確固たる自我を持ち自己を律した主体が前提とされ、その範疇に動物は入りませんでした。また、このヒューマニズムを土台にした近代国家の成立は、戦争遂行を通じて国家にとって良き主体=国民の選別を行うと同時に、動物の「飼いならし」の技術を援用した戦争技術の発達と、戦争への動物利用を加速させてきた側面があります。1970年代以降に発達した動物の権利と解放を求める運動は、工場式畜産の廃止と、動物搾取の廃絶を求め、人間を他の動物よりも優位なものとみなす種差別の規範の解体を求めてきました。

 イスラエルにおいて、こうした運動が主流化し始めたのが2010年代でした。性の政治で起こってきたことと同様、この2010年代の動きは、「テロリスト」の野蛮性を強調しながら、イスラエルという国家の「倫理性」を強調する対テロ戦争におけるナショナリズムの言説に利用されてきたという点でも顕著です。

 このように、イスラエルにおいて近年顕著になりつつある動物の権利あるいはヴィーガニズムの高まりと、ナショナリズムの間のつながりを追っています。

 

【3】性の政治と動物の政治(①と②)

 これまでフェミニズム・クィア理論と批判的動物研究という二つの研究領域をあくまで別建てで紹介してきましたが、より理論的に、動物の政治が性の政治に与える示唆・視座を考察することにも関心があります。例えば、エルサレムのプライドでは、「LGBTプライドは獣のプライドだ」と反対派から言われることがあります。この発言は特定の性のあり方のみを不道徳とみなし、文字通り人外の行為と位置付ける差別発言であるといえばそれまでではあるのですが、より深く考えれば、セクシュアリティが近代主体にとってコントロールできないもの、すなわち「獣性」として規定されてきたということを示唆してもいます。

 このように、ジェンダー・セクシュアリティと動物性は広く、そして様々な形で交差するものです。女性性と動物性を主に分析してきたのが「エコフェミニズム」と呼ばれる領域で、代表的なところでは肉食と男性性、動物搾取と女性の抑圧の共通性等を指摘しました。

 このエコフェミニズムの議論を引き継ぎながら、動物性がジェンダーやセクシュアリティとどのように交差するのかを考えることに関心があります。

 

 現在は、人間文化研究機構のもつ大学・拠点横断型研究プロジェクトである「グローバル地中海地域研究プロジェクト」(国立民族学博物館(中心拠点)、東京外国語大学AA研、東洋大学、同志社大学)の研究員として、その拠点の一つである同志社大学拠点(同志社大学都市共生研究センター)でプロジェクト推進と研究活動を行っています。
 グローバル地中海地域研究:https://www.r.minpaku.ac.jp/gmed/about.html


委員歴

  1

論文

  6

MISC

  15

主要な書籍等出版物

  17

講演・口頭発表等

  34

担当経験のある科目(授業)

  9

所属学協会

  8

共同研究・競争的資金等の研究課題

  6

社会貢献活動

  14