2020年4月 - 2023年3月
社会ストレスによる樹状突起委縮を担う分子機序の解明とその制御法の確立
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
社会や環境より受ける過度のストレスは内側前頭前皮質神経細胞の形態的萎縮を組織学的基盤とした認知情動変容を招く。しかし、樹状突起やシナプス構造の萎縮を担う分子細胞生物学的な機序は殆ど分かっていない。本研究では、マウスうつ病モデルである社会挫折ストレスモデルを用いて樹状突起やシナプス構造の萎縮を導く機序を解明することを目的とする。今年度は、樹状突起やシナプス形態変化と関連する細胞内構造変化を明らかにするために三次元電子顕微鏡及び超解像イメージングを用いストレス後の前頭前皮質を観察した。その結果、慢性ストレス後に樹状突起分枝の欠失とミトコンドリアの過剰分裂型形態変化が生じることを見出した。また、ストレスによりミトコンドリアを有するシナプス特異的に構造退縮が生じること、さらにシナプス分画のミトコンドリア特異的に機能低下が生じることを見出した。これらの知見は、ストレスによりシナプスや樹状突起のミトコンドリアが変容し、神経細胞の形態的萎縮を招くことを示唆する。ミトコンドリアは中央代謝系の中心的役割を担う。そのためプロテオミクス解析に中央代謝系分子を網羅的に定量解析し、ストレスにより発現変動を示す分子群を同定した。さらにそのうちの一つについて発現抑制を行うことにより情動変容を抑制できることを見出しつつある。今後は同分子並びに抽出されたその他の候補分子について薬理学的・分子生物学的な操作を実施し、神経細胞の形態的萎縮を担う分子機序、並びに認知情動変容を生じる分子機序を明らかにする。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K07288
- 体系的課題番号 : JP20K07288