共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年7月 - 2022年3月

語り継ぐ存在の身体性と関係性の社会学―排除と構築のオラリティ

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
17KT0063
体系的課題番号
JP17KT0063
配分額
(総額)
18,850,000円
(直接経費)
14,500,000円
(間接経費)
4,350,000円

本年度の調査研究および研究会における議論から、以下のような成果があがった。
人生とともにあるオラリティは記録されることで記憶され、記憶されることで忘却に抗い、コモンメモリーになりうる可能性を持つ。この点について、文字を持つことで「語るだけの人生がある」ことを表現した識字学級の記録、過去のオラルプロテストの記録をつなぎあわせて地域の被害集積性を見える化した新潟水俣病の事例、また災害による生活変容を行事や生業のあり方について記述・分析した。さらに、オラリティは、「語り部」として制度化されるのみならず、個別具体的な災害経験の物語化を通して、社会的に価値づけられ、制度化されていくことを明らかにした。
また、オラリティの持つ「力」を排除しようとしたときにヘイトスピーチが生まれ、社会的に不公正な状況を背景にした相対的剥奪感(ねたみ)が生じたときに語りへの沈黙が生まれがちである。排除は無意味な対立を招き、ねたみがもたらす平等は社会正義を低空飛行させる。しかし、こうした状況に可変性を与えるのも具体的な身体と身体のコミュニケーションである。特に「見えにくい被害」の「見える化」にあたって、オラリティの力はオラリティを聴く力としても表出するからである。たとえば、淡々と語られる日常から、その変容を具体的に記述することは、その時代・地域の文脈を共有しなくてはならないからである。
こうした分析に加えて、オラリティの記録化についても議論した。当事者による記録化を後押しする手法、聞き書や映像記録のように第3者の編集を経て記録化される手法があるが、いずれも権利へのアクセスであると同時に、「生」をめぐる時代の記録である。オラリティの個別具体的な世界が射程に入れるのは、現在への批判的な視座であると同時に、肯定しうる未来への創造的視座である。
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リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-17KT0063
ID情報
  • 課題番号 : 17KT0063
  • 体系的課題番号 : JP17KT0063

この研究課題の成果一覧

論文

  3

MISC

  1
  • 宮内泰介
    関礼子編『語り継ぐ経験の居場所:排除と構築のオラリティ』 250-254 2023年11月  筆頭著者

書籍等出版物

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講演・口頭発表等

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