MISC

2021年8月

大規模データベースを活用した肺癌手術での腎不全症例と入院医療費・術後在院日数との関連の評価

日本透析医会雑誌
  • 山本 博之
  • ,
  • 隈丸 拓
  • ,
  • 佐藤 幸夫
  • ,
  • 遠藤 俊輔
  • ,
  • 宮田 裕章

36
2
開始ページ
293
終了ページ
298
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
(公社)日本透析医会

近年では我が国でも様々な大規模データベースが上梓され、その利活用が進められている。そして、新たな選択肢として大規模データの種類の増加により、これまで精緻な解析が難しかった研究課題についても実施可能になっている。本研究課題では、日本の外科手術の現状を示すNational Clinical Databaseの呼吸器外科領域のデータと、診療報酬データとして広く利活用の進むDPCデータの二つの大規模データを使用し、肺癌に対して肺葉切除術を実施した際の、術前透析や術後腎不全が周術期入院医療費や術後在院日数に与える影響の評価を行った。409施設より10,326症例を対象症例として同定したところ、術前透析・術後腎不全はそれぞれ54例(0.52%)・5例(0.05%)に観察された。術前透析例では非実施例と比べ、術後在院日数は同等で、入院医療費は若干増加がみられたが、それは入院中の透析関連費用で説明できる程度であった。術後腎不全では術後在院日数・入院医療費のいずれも増加がみられ、その他の術後合併症の中でも影響の大きなグループに分類された。以上より、現状の術前透析例の手術・周術期管理は安全・適正に実施されていることが示唆され、術後腎不全は本術式では頻度は少ないが、医療資源の観点よりも重要な合併症であることが確認された。これらの情報は周術期の腎不全の診療報酬上の取り扱いを考えるうえで重要な情報と考えられた。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 0914-7136
  • 医中誌Web ID : 2021339042

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