共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

内因性抗炎症Del-1分子の誘導による炎症性骨破壊の新規治療戦略

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
19H03828
配分額
(総額)
17,550,000円
(直接経費)
13,500,000円
(間接経費)
4,050,000円

歯周炎は慢性炎症に伴う歯周組織の破壊を特徴とし,心疾患や関節リウマチ,糖尿病など様々な全身疾患への憎悪的な波及が示唆されている.歯周病原細菌は,歯周組織への過度な好中球の浸潤を促し,炎症性サイトカインや骨吸収促進因子の産生を引き起こすことで破骨細胞を活性化し,骨破壊を誘導する.これまでに血管内皮細胞の産生するDEL-1が,好中球の走化性を低下させ過度な炎症を抑制すること,破骨細胞の分化および骨吸収活性を抑制すること,およびDEL-1は破骨細胞自身からも産生され,破骨細胞分化を負にフィードバックすることを明らかにしてきた.
令和元年度には,DEL-1の発現制御機構,およびDEL-1による炎症制御・破骨細胞分化・骨吸収活性の抑制メカニズムを統合的に解析した.すると,DEL-1の歯肉への直接的な接種によるマウス歯周炎モデルでの歯周炎抑制効果が認められた.さらにDEL-1には破骨細胞への骨吸収抑制作用だけではなく,骨芽細胞に作用し,骨の再生を促している可能性を見出した.そこで,令和2年度は,DEL-1の誘導効果が高いマクロライド系抗菌薬の一つであるエリスロマイシンによるDEL-1誘導経路の同定とDEL-1による骨破壊抑制機構および歯周炎と同様な粘膜疾患である肺炎での抗炎症作用の解明を目指した.具体論として,エリスロマイシンのDEL-1誘導経路同定には,DEL-1産生細胞である血管内皮細胞および破骨前駆細胞を用いた.エリスロマイシン全身投与モデルでは,マウスの肺および歯周組織を対象とした解析をおこなった.マウスは野生型およびDEL-1ノックアウトマウスを使用することにより,エリスロマイシンによる効果がDEL-1依存的なのかを確認できるようにした.これらにより,エリスロマイシンに強いDEL-1誘導能があること,誘導されたDEL-1に抗炎症作用および骨再生能が存在することが明らかになった.

ID情報
  • 課題番号 : 19H03828