がん細胞は、高度な増殖を維持するため栄養要求性が非常に高い。急速な増殖は、腫瘍組織の中心部を慢性的に低酸素・低栄養状態にする。つまり、がん細胞は腫瘍組織に特異的な微小環境ストレスに耐えながら生存し、病態を進展させている。がん細胞は過酷な環境下にあっても細胞死から逃れるため、代謝機構を巧みに変換させ、エネルギーや生体物質を産生し生存していると考えられている。AMPキナーゼ(AMPK)は、細胞内のエネルギー低下を感知し、恒常性を維持するうえで中心的な役割を担っている。AMPKの活性化は細胞周囲の環境や状況によって大きく変化し、がんにおけるAMPKには腫瘍抑制と促進の二面性が存在する。本稿では、AMPKの活性化機構の概要と最新の知見、がんにおけるAMPKの意義についてまとめた。さらに、低栄養などの微小環境ストレスがAMPKを活性化し、がん細胞の悪性化を助長する機序について解説する。(著者抄録)