2020年4月 - 2022年9月
性的虐待被害者にとって生とは何か――当事者研究の角度から
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
今年度は、新型コロナウィルスの影響で新たなインタビュー調査およびフィールドワークが困難となったため、まず、本研究に関係する国内外の研究動向の把握を行った。これまでの理論的研究成果の公開を目的として、10月には大阪大学人間科学研究科未来共創センター機関誌『未来共創』に論文投稿を行った。本論文では、特に1980年代以降アメリカで発展したPTSDをめぐる議論を「トラウマのPTSDモデル」と定義したうえで、日本の性暴力被害者ケアと回復をめぐる言説を、新自由主義とポストフェミニズムという現代の社会状況の観点から分析を試みた。本論文は『未来共創』第8号に掲載されることとなった。
12月には、現象学的手法で語りを分析する「臨床実践の現象学会」の研究会にて発表を行った。本調査により、PTSDやトラウマケアといったグローバルな治療・支援モデルが、従来その周縁領域とされてきた学校、家庭、職場といった日本のローカルな生活世界になかに位置づけられたとき、かえって学校や職場への行きづらさという別種の困難をもたらしうることが明らかとなった。
3月には、性暴力被害当事者が自分で自分を語る場の実現を目的に、「多様化する嗜癖・嗜虐行動からの回復を支援するネットワーク(ATA-net)」および一般社団法人「もふもふネット」サポートのもと、「箱を飛び出せ――性被害当事者との対話」というイベントを企画した。本イベントでは、企画立案から当事者と協同で行った。性被害者という属性による語りの期待から自由になる環境づくりに焦点をあて、(1)当事者各人の発表時間を作ること、(2)研究者側が発表形式を規定しないことの2点を柱に据えた。その結果、当事者が被害者支援をどのように経験しているのか、そして、生活という社会・文化的次元においてトラウマを軸とする心理回復モデルをどのように経験しているのかという主題に焦点を当てることができた。
12月には、現象学的手法で語りを分析する「臨床実践の現象学会」の研究会にて発表を行った。本調査により、PTSDやトラウマケアといったグローバルな治療・支援モデルが、従来その周縁領域とされてきた学校、家庭、職場といった日本のローカルな生活世界になかに位置づけられたとき、かえって学校や職場への行きづらさという別種の困難をもたらしうることが明らかとなった。
3月には、性暴力被害当事者が自分で自分を語る場の実現を目的に、「多様化する嗜癖・嗜虐行動からの回復を支援するネットワーク(ATA-net)」および一般社団法人「もふもふネット」サポートのもと、「箱を飛び出せ――性被害当事者との対話」というイベントを企画した。本イベントでは、企画立案から当事者と協同で行った。性被害者という属性による語りの期待から自由になる環境づくりに焦点をあて、(1)当事者各人の発表時間を作ること、(2)研究者側が発表形式を規定しないことの2点を柱に据えた。その結果、当事者が被害者支援をどのように経験しているのか、そして、生活という社会・文化的次元においてトラウマを軸とする心理回復モデルをどのように経験しているのかという主題に焦点を当てることができた。
- リンク情報
- ID情報
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- 課題番号 : 20J12138
- 体系的課題番号 : JP20J12138
この研究課題の成果一覧
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論文
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女性学 30 73-91 2023年4月4日 査読有り筆頭著者
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ジェンダー研究 : お茶の水女子大学ジェンダー研究所年報 25 177-195 2022年8月4日 査読有り筆頭著者
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未来共創 9 33-65 2022年7月22日 査読有り筆頭著者
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未来共創 8 31-63 2021年7月8日 査読有り筆頭著者
MISC
2-
臨床哲学ニューズレター 4 23-23 2022年3月
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レヴィナス研究 3 57-61 2021年8月
講演・口頭発表等
4-
川崎唯史『メルロ=ポンティの倫理学——誕生・自由・責任』合評会 2022年7月31日 大阪大学大学院人間科学研究科共生の人間学研究室/科学研究費補助金・基盤研究C「いわく言いがたいものの現象学:フランス現象学」の生成と発展に関する研究」 招待有り
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日本女性学会 2022年大会 2022年6月19日
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日本子ども虐待防止学会 第27回学術集会かながわ大会 2021年12月5日
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臨床実践の現象学研究会 第125回 2020年12月5日
社会貢献活動
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