共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2022年9月

性的虐待被害者にとって生とは何か――当事者研究の角度から

日本学術振興会  科学研究費助成事業  特別研究員奨励費

課題番号
20J12138
体系的課題番号
JP20J12138
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
2,100,000円
(直接経費)
2,100,000円
(間接経費)
0円

今年度は、新型コロナウィルスの影響で新たなインタビュー調査およびフィールドワークが困難となったため、まず、本研究に関係する国内外の研究動向の把握を行った。これまでの理論的研究成果の公開を目的として、10月には大阪大学人間科学研究科未来共創センター機関誌『未来共創』に論文投稿を行った。本論文では、特に1980年代以降アメリカで発展したPTSDをめぐる議論を「トラウマのPTSDモデル」と定義したうえで、日本の性暴力被害者ケアと回復をめぐる言説を、新自由主義とポストフェミニズムという現代の社会状況の観点から分析を試みた。本論文は『未来共創』第8号に掲載されることとなった。
12月には、現象学的手法で語りを分析する「臨床実践の現象学会」の研究会にて発表を行った。本調査により、PTSDやトラウマケアといったグローバルな治療・支援モデルが、従来その周縁領域とされてきた学校、家庭、職場といった日本のローカルな生活世界になかに位置づけられたとき、かえって学校や職場への行きづらさという別種の困難をもたらしうることが明らかとなった。
3月には、性暴力被害当事者が自分で自分を語る場の実現を目的に、「多様化する嗜癖・嗜虐行動からの回復を支援するネットワーク(ATA-net)」および一般社団法人「もふもふネット」サポートのもと、「箱を飛び出せ――性被害当事者との対話」というイベントを企画した。本イベントでは、企画立案から当事者と協同で行った。性被害者という属性による語りの期待から自由になる環境づくりに焦点をあて、(1)当事者各人の発表時間を作ること、(2)研究者側が発表形式を規定しないことの2点を柱に据えた。その結果、当事者が被害者支援をどのように経験しているのか、そして、生活という社会・文化的次元においてトラウマを軸とする心理回復モデルをどのように経験しているのかという主題に焦点を当てることができた。

リンク情報
URL
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20J12138/
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20J12138
ID情報
  • 課題番号 : 20J12138
  • 体系的課題番号 : JP20J12138

この研究課題の成果一覧

論文

  4

MISC

  2

講演・口頭発表等

  4

社会貢献活動

  1