基本情報

所属
成蹊大学 理工学部 理工学科 / サステナビリティ教育研究センター 教授
学位
博士(理学)(東北大学)

J-GLOBAL ID
200901087510189600
researchmap会員ID
1000283407

外部リンク

<<研究分野と背景>>
大気上端に位置する熱圏・電離圏領域(高度、およそ100-800 kmの領域)は、人工衛星やスペースシャトルが飛翔しオーロラが乱舞する、宇宙空間と大気との境界領域である。上方(磁気圏)からの太陽風起源のエネルギーと、下方(対流圏・成層圏・中間圏)からの大気波動等のエネルギー・運動量流入によって、熱圏・電離圏が激しく変動する様子が近年の観測・数値シミュレーションから明らかとなってきた。また、熱圏・電離圏の変動予測は、GPS 測位に代表される通信システムの高度な宇宙利用の結果、その安全な運用のために情報・通信、航空宇宙分野においても重要な研究課題となっている。

<<主な研究テーマ>>
1. 地球大気全域大循環モデル開発とシミュレーション
九州大学グループとの共同により、地表から大気上端までを計算可能な数値モデルの開発に世界で初めて成功した[Miyoshi and Fujiwara, 2003]。高度約 300 km の領域でオーロラエネルギー流入によって極域で励起される大規模波動に加えて、昼夜境界や真夜中の温度異常帯でも地球の自転にともなって伝搬性の大気擾乱が励起される可能性がはじめて示された[Fujiwara and Miyoshi, 2006]。さらに、高度300 kmの高高度においても対流圏起源と考えられる大気変動が見つかっており、次々と新しい成果が生まれつつある[例えば、Fujiwara and Miyoshi, 2009, 2010]。

2. 欧州非干渉散乱レーダー観測研究
極域熱圏・電離圏での大気運動やエネルギー収支を調べるため、国際共同で北欧に設置されている欧州非干渉散乱(European incoherent scatter: EISCAT)レーダー・データの解析を行ってきた。
下部熱圏では、強い鉛直シアー(> 50 m/s/km)を伴った水平風がしばしば観測されるが、その成因や熱圏での運動量・エネルギー収支に果たす役割については理解が及んでいない。EISCATデータから水平風プロファイルを高時間分解能で導出し、(シアー不安定に起因する)乱流エネルギー散逸量と磁気圏から流入する電磁エネルギー散逸量の同時推定にはじめて成功した [Fujiwara et al., 2004]。また、地磁気擾乱時の極冠域で電離圏・熱圏加熱現象についても新たな知見が得られている [Fujiwara et al., 2007; Fujiwara et al., 2014]。2010-2017年度にはEISCAT特別実験が採択され、極冠域での熱圏・電離圏変動について詳細を調べている。

3. 大気圏・電離圏統合モデル開発
衛星通信等の宇宙通信が我々の生活に不可欠となった結果、熱圏・電離圏変動による通信障害は航空機や船舶のGPS測位を不能とし重大事故を引き起こす可能性を伴うようになった。しかしながら、モデリング研究の遅れと基礎データの不足などからここでの変動予測は天気予報のレベルにはほど遠い。熱圏・電離圏の数値予報のためのシステム構築と観測データに基づく素過程のモデリングを実施している。本研究では、九州大学、情報通信研究機構、国立極地研究所、名古屋大学、京都大学グループとの共同によって研究を進めている。(Jin et al., 2011など)

4. 宇宙機軌道データ等からの熱圏大気質量密度の推定
人工衛星や他の宇宙機の軌道データや加速度計データを用いることにより、熱圏領域の大気質量密度が推定できる。しかしながら、現状では、広範囲にわたっての高時空間分布の推定は困難であり、これまで観測が十分ではなかった高度200-300kmでの密度推定のための研究を進めている(JAXA、九州大学との共同研究)。本研究課題は、宇宙機に働く大気摩擦力の推定(予測)にもつながるものであり、宇宙機の安全な運用において重要と考えられる。

経歴

  20

論文

  90

MISC

  55

書籍等出版物

  2

講演・口頭発表等

  274

共同研究・競争的資金等の研究課題

  30