共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

周術期脳虚血モデルに対するデルタオピオイド受容体アゴニストの効果

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
19K10357
担当区分
研究分担者
配分額
(総額)
4,160,000円
(直接経費)
3,200,000円
(間接経費)
960,000円

2019年度は実験モデルの確立に努めた。
マウスを用いた周術期脳虚血モデル:ICRマウスに対して左総頚動脈を露出した後,絹糸で結紮し,それとともに100 mcg/kgの少量のlipopolysaccharide(LPS)を腹腔内へ投与した。6時間後に左総頚動脈を露出させ結紮を解除した。3日後にイソフルラン吸入麻酔下に灌流固定を行い,取り出した脳をパラフィン固定し,切片を作成したのち,TUNEL染色した。その結果,海馬歯状回においてDNA断片化が認められた。以前同様のモデルで海馬に発現するIL-6 mRNAレベルを調べたところ,少量のLPSにより虚血再灌流によるIL-6 mRNAの発現が増強されたことから,今回のDNA断片化も少量のLPSにより増強されたと考えられた。
マウス海馬プライマリセルカルチャによるモデル:海馬プライマリセルカルチャーに対して,低酸素環境と非低酸素環境でリコンビナントTNF alphaを作用させ,TNF alpha受容体およびDNA断片化に対する免疫染色を行なった。低酸素環境を6時間維持したところ,海馬ニューロンの生存を維持することができず,TNF受容体およびDNA断片化についての結果を得ることができなかった。しかし,非低酸素環境下ではリコンビナントTNF alphaによりTNF alpha受容体に対する強いシグナルが認められた。このことから海馬ニューロンはTNF alphaによってTNF受容体の発現が強まり,その後の細胞内シグナル伝達が促されることが考えられた。このことは前述のマウスを用いた実験で示唆された海馬神経細胞のアポトーシスが惹起された機序を示唆するものであると思われた。すなわち,炎症反応が海馬で惹起されることにより,海馬ニューロン膜上のTNF受容体が活性化され,それから始まるシグナル伝達を介してアポトーシスが惹起されると考えられた。

ID情報
  • 課題番号 : 19K10357