共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2020年3月

「阿吽の呼吸」の神経基盤

日本学術振興会  科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)  新学術領域研究(研究領域提案型)

課題番号
18H04959
配分額
(総額)
5,850,000円
(直接経費)
4,500,000円
(間接経費)
1,350,000円

日本を含む多くの文化圏では、指揮者やメトロノームのような基準なしに、複数の演奏者同士が「阿吽の呼吸」や「以心伝心」で自律的に表現行動の同期をとり、一糸乱れぬ見事な演奏を実現する表現芸術が多く存在する。本研究では、その背景となる神経基盤を明らかにするために、大規模な人間集団の同期現象によって魅力的な芸術表現を実現している典型例として、インドネシア・バリ島の祭祀祝祭芸能「ケチャ」をとりあげ、その表現行動を支える脳機能の同期性を明らかにすることにより、「阿吽の呼吸」のコミュニケーションを支える神経基盤に迫る。
これまでの領域内共同研究により、ケチャの演奏者を振動子とみたて、ネットワーク上のノイジーな振動子集団について、ラプラス行列が非対称な場合の集団の同期の良さを定量化してネットワーク構造の優劣を比較し、少数の振動子からなる強連結ネットワークの同期の良さを検討したところ、上級者を振動子集団の先頭に配置するときに良い同期が得られることが示された。そこで、実際のケチャ演奏時に、さまざまな配置を試し、ケチャのリズムパターンの同期に及ぼす影響を調べた。まず通常通り、経験者と初心者が交互になるように演奏者を配列した場合、ケチャのリズムの同期はほとんど不可能であった。次に、4列縦隊をなす先頭と最後尾を全て経験者にして、中間の2列を初心者とした場合、美しい同期が得られた。さらに隊形を完全な円形ではなく、円弧状にすることで、演奏者間の距離を縮め、お互いの膝が触れあうようにしたところ、同期性は非常に高まった。このことは、単なる聴覚性フィードバック以外の要因が同期性の形成に大きく貢献することを示唆しているものと考えられる。

ID情報
  • 課題番号 : 18H04959