論文

査読有り
2018年1月

日本語学習者の作文執筆修正過程 : 中国人学習者と韓国人学習者の修正の位置と種類の分析から

国立国語研究所論集
  • 田中 啓行
  • ,
  • 石黒 圭
  • ,
  • Hiroyuki TANAKA
  • ,
  • Kei ISHIGURO

14
開始ページ
255
終了ページ
274
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.15084/00001423
出版者・発行元
国立国語研究所

国立国語研究所 研究系 日本語教育研究領域 非常勤研究員国立国語研究所 研究系 日本語教育研究領域本研究は,日本語学習者の大学生が作文を執筆する際に,どの部分をどのように修正しているかを明らかにすることを目的として,パソコンを用いて執筆した2,000字程度の作文の執筆過程を分析したものである。執筆中にEnterキー,Deleteキーなどを押した箇所を記録し,その記録を基に,修正の位置と種類のタグ付けを行った。分析対象とした作文は,中国人日本語学習者,韓国人日本語学習者,日本語母語話者の大学生各20名が書いた説明文,意見文,歴史文の3種,合計180本である。まず,「①修正数」は,韓国人学習者,中国人学習者,母語話者の順に多かった。次に,「②修正の種類」は,3グループともに,多い順から「変更」「挿入」「削除」「反復」「移動」であり,いったん入力した表現を消して打ち直す修正がもっとも多いことがわかった。各修正の割合は,中国人学習者と母語話者が似た傾向を示し,韓国人学習者は「挿入」と「反復」が多いという特徴が見られた。さらに,「③修正の位置」は,中国人学習者は執筆中の作文の文字列の先端部分である「先頭部」を修正する「入力」が多かったのに対して,韓国人学習者は先頭部がある段落とは別の段落を修正する「段落外」が多かった。母語話者は,他のグループよりも,先頭部を含む文の中を修正する「文内」の割合が高かった。また,「②修正の種類」「③修正の位置」とは別に,ある箇所を修正した後,先頭部に戻らずに続けて別の箇所の修正を行った部分に「推敲」というタグを付けて集計したところ,韓国人学習者の修正の半数近くが「推敲」であり,「推敲」が約30%の中国人学習者,約20%の母語話者よりも割合が高かった。以上より,母語話者は,入力中の先頭部の文節だけでなく,その文節を含む文の範囲を考慮に入れながら修正を行う一方,複数箇所の修正を連続で行うことは少ない,韓国人学習者は,作文をある程度書き進めてから,書き終わった段落を中心に修正し,複数箇所を続けて修正することが多い,中国人学習者は,入力中の文の先頭部を中心に修正しながら執筆していることが明らかになった。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.15084/00001423
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/120006381951
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AA12536262
URL
http://id.ndl.go.jp/bib/028864363
URL
http://id.nii.ac.jp/1328/00001423/
ID情報
  • DOI : 10.15084/00001423
  • ISSN : 2186-134X
  • CiNii Articles ID : 120006381951
  • CiNii Books ID : AA12536262

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