共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

GPUスーパーコンピュータによる原子炉内溶融物の移行挙動解析

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
19K11992
体系的課題番号
JP19K11992
配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
3,300,000円
(間接経費)
990,000円

過酷事故(SA)時における原子炉内溶融物の移行挙動の解明は、事故後の炉内状況把握および廃炉作業効率化の観点から非常に重要である。一方、数値流体力学解析による溶融物の移行挙動の機構論的解析には、マルチスケール/マルチフィジクスに対応した高度な物理モデルと膨大な計算機資源が必要であり、実機を対象とした解析は殆ど行われていない。上記課題に対して、原子力機構では多相多成分熱流動解析コードJUPITERの開発を進めている。SA解析において、圧力容器内の燃料溶融からペデスタル内部のデブリ蓄積に至る全体像を解明するには、解析の更なる高解像度化および長時間解析が必須となっている。しかしながら、多相流体解析を大規模化する上で多種溶融物の質量・体積等の保存を課すために計算する圧力Poisson方程式がボトルネックとなっている。圧力Poisson方程式が与える大規模疎行列は反復行列解法によって計算するが、極端な密度比が行列の条件数を悪化させる多相流体問題では、問題規模の増大による収束特性の悪化および並列数の増大に伴う通信コストの顕在化が計算性能を劣化させて長時間解析を阻害する。
本研究では、GPUを利用したエクサスケール向けの多相流体解析を開発する。大規模な圧力Poisson方程式に対しては、GPU向けの省通信型マルチグリッド(MG)法を開発することで収束特性を改善すると共に、ステンシル計算向けのGPU最適化フレームワークやブロック型適合細分化格子(AMR)法といった最先端の計算機技術を活用することで解析の飛躍的な高速化する。以上の解析技術により、実機を対象とする溶融物の移行・蓄積挙動の長時間解析を実現することが初めて可能となる。本研究は福島第一原子力発電所の廃炉に向けたデブリ解析の基盤技術確立に繋がるだけでなく、様々な工学分野における多相流体解析にも大きく貢献できることが期待される。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11992
ID情報
  • 課題番号 : 19K11992
  • 体系的課題番号 : JP19K11992