共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2025年3月

1910-1920年代イタリア美術のモダニズム再考:「秩序回帰」と純粋な造形性

日本学術振興会  科学研究費基金(若手研究)  若手研究

課題番号
19K13014
体系的課題番号
JP19K13014
担当区分
研究代表者
資金種別
競争的資金

今年度の研究実績は以下の二点である。
(1)ファシズム期の公共芸術
昨年度に引き続き、彫刻家アルトゥーロ・マルティーニの作品研究を進めるなかで、ファシズム期の公共芸術の機能が新たな問題として浮かび上がってきた。第一次世界大戦後のイタリアではリソルジメントの偉人像の伝統を継ぐ公共彫刻ブームが起きたが、時として作品の美的価値を軽視したこの流行に、当時イタリアでも否定的な議論があったことがわかった。その後、ファシスト政権はいかにして公共芸術を利用していったか、経緯について今後研究を進める必要がある。
(2)両大戦間期のイタリア芸術における時間概念の諸相
未来派の芸術家ボッチョーニのテクストを精読する過程で、彼が哲学者ベルクソンの思想を介して見出した相互浸透する運動表象は、時間経験の問題に深く根ざしていることがわかった。他方で、昨年度までの研究で明らかになったように、同時期にデ・キリコやカルロ・カッラといった形而上絵画の旗手たちは「近代」、「原始」、「古典」の概念の再解釈を提起している。これまでの研究において、20世紀前半のイタリア芸術はしばしば、この二陣営の対立という図式で捉えられてきた。しかし、以上のことから、同時代の芸術は過去から未来へと進んでいく直線的な時間概念の失効という前提を共有していたと仮定することが可能なのではないかと考えるに至った。この点は、イタリアにおけるモダニズムを再考することを目的とした本課題にとって、重要な論点になると考えられるため、次年度はこの仮説を個々の事例を通じて検証していきたい。

リンク情報
URL
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K13014/
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K13014
ID情報
  • 課題番号 : 19K13014
  • 体系的課題番号 : JP19K13014

この研究課題の成果一覧

論文

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書籍等出版物

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  • アキッレ・ボニート, オリーヴァ監修 (担当:分担執筆, 範囲:アキッレ・ボニート・オリーヴァ「偉大なるイタリアの芸術作品」、クリスティアーナ・コッル「臨時ミュージアムは巡回中」、アンジェラ・テッチェ「戦後のイタリア芸術における抽象」(池野絢子訳))
    イタリア文化会館/ Silvana Editoriale 2023年3月 (ISBN: 9784901955089)
  • 小田原のどか編 (担当:分担執筆, 範囲:池野絢子「彫刻の二重の起源:一九二〇年代のアルトゥーロ・マルティーニ」)
    書誌九十九 2022年3月18日 (ISBN: 9784991226519)
  • (担当:分担執筆, 範囲:F・T・マリネッティ「未来派文学技術宣言+未来派文学技術宣言補遺」(池野絢子訳))
    引込線/放射線パブリケーションズ 2020年8月

講演・口頭発表等

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