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ヒトに固有なNOTCH2NLB遺伝子はNotchシグナルの制御を介して大脳皮質のニューロンを増加させる

ライフサイエンス 新着論文レビュー
  • 鈴木 郁夫
  • ,
  • Pierre Vanderhaeghen

ヒトの発達した認知機能の基盤は大きく拡大した大脳皮質である.しかし,ヒトにおける大脳皮質の進化の背景にある遺伝的な機構についてはあまりわかっていない.遺伝子の重複により新しい遺伝子が出現することは,表現型の進化を駆動する機構となりうることが広く受け入れられている.そこで,ヒトの進化の過程において重複した遺伝子が大脳皮質の発生に関与する可能性について検討するため,重複した遺伝子の発現を解析した.この解析により発見されたNOTCH2NLB遺伝子はヒト以外の生物種には存在せず,ヒトのゲノムにおいて脳の容積の異常と関連するゲノム領域にコードされていた.実験的な解析により,NOTCH2NLB遺伝子はヒトの大脳皮質の前駆細胞においてNotchシグナルを活性化することにより,前駆細胞を未分化なまま維持する効果をもつことが明らかにされた.これらのことから,ヒトはチンパンジーと分岐したのちNOTCH2NLB遺伝子を獲得したことにより,より長期間にわたりニューロンの産生がつづくようになり,その結果,より多くのニューロンにより構成される大きな大脳皮質を獲得したと考えられた.

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http://first.lifesciencedb.jp/archives/18331

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