基本情報

学位
博士(学術)(2013年12月 電気通信大学)

研究者番号
60899219
J-GLOBAL ID
202501015585270628
researchmap会員ID
R000083586

主観的な「意味」の経験をもたらす人間系の情報処理を、どのようにモデル化し得るのか?

これを課題に掲げ、在野で研究に取り組んでいます。


主要な関心領域は、人間に配慮した技術・ものづくり、特にメディア・コミュニケーション技術の設計、社会への実装にあります。

人間と調和した人工物のあり方を探求しようという場合、「人間」をいかに理解するかということが問題になります。

・「人間」をどう理解したらよいのか?

・「人間」を、どうモデル化したらよいのか??

こういった問いに対して、従来から工学の諸領域では、人間工学、感性工学、認知心理学、ヒューマン・インターフェースの設計論、人間中心設計など、客観的に観察・記述可能な人の身体や神経系の反応様式に配慮したものづくりの手法は盛んに研究され、応用されてきました。

また、人間の「主観」的経験の領域、特に人工物を利用しその「ユーザ」として生きる主観的な経験(感情、感覚、思考、直観)の世界がどのようになっているのかについても、たとえば文化人類学のエスノグラフィーや参与観察の手法を応用するなどして観察・記録する手法が開発されてきました。


私はこの人間が「主観」的経験について報告する際に用いる「言語」に関心を持っています。

主観的な意味の経験について報告する言語について考える場合、重要なことは、人それぞれが利用できる言語・語彙の差異に応じて、主観的に経験される意味ある世界のあり方が異なったものになるということでです。

言語は、単一の客観的世界をありのままに報告する透明な媒体ではなく言語自体が「意味分節・存在分節」(井筒俊彦)の機能を持つと考えることもできます。


特に、人間と「チャット」「会話」するAI(人工知能)の活用が急速に広がりつつある現在、自然言語は人間とAIとをつなぐインターフェースそのものになりつつあります。

ここで人間と人工物(AI)とのコミュニケーションのインターフェースのよりよいあり方を工学的に探求するためにも、人間側の自然な言語の経験、その主観的な意味の経験についての理解が欠かせないことになります。

 

個々人にとっての言語的に意味ある世界の経験が、誰にとっても同じものではなく静的なものでもなく、「意味分節・存在分節」する動的なプロセスであり、特にそのダイナミックな変容の過程で、一義的にコード化することができない、多義的で両義的な様相を呈することを前提として、その上で、この人間系の情報処理と機械系の情報処理とをインターフェースする仕組みが必要になります。


では、そのようなダイナミックに変容する主観的に意味ある世界の経験を生み出す人間系の情報処理のプロセスを、一体どのようにモデル化しうるのか?

そのモデル構築のヒントとなりうる先行研究として、文化人類学、特にクロード・レヴィ=ストロースの神話研究、そしてカール・グスタフ・ユングの分析心理学における「個性化」のモデルとしてのマンダラの理論に注目しています。

・クロード・レヴィ=ストロースの神話公式Fx(a):Fy(b)=Fx(b):Fa−(y)
・ユングによる「個性化」のモデルとしてのマンダラの理論

レヴィ=ストロースは文化人類学者、ユングは心理学者です。レヴィ=ストロース、ユング、それぞれの別々の学問領域の研究対象となるもので、それぞれの用いる専門用語も全く異なるものです。しかし、その論理に注目すると、両者とも人間系の情報処理のアルゴリズムを「分離する動き」と「結合する動き」の述語的様相の伸縮運動としてモデル化しようと試みていると読むこともできる可能性があります。この領域横断的な接続による論理の抽出を可能にするアルゴリズムとして、空海が『吽字義』で展開した四つの「不可得」を組み合わせる論理に着目しています。密教の曼荼羅もまた「心」のモデルです。


今日、AIは未曾有の発展を遂げています。

従来、社会の中で「言葉を話し、書く」アクターは人間だけでしたが、ここにAIが加わりつつあります。もちろん現在のLLMは、人間が生成した文字列のパターンを学習し、質問文に対応するあり得る可能性の高い回答文を生成するアルゴリズムですが、しかし人間の側の主観的な経験としては、AIは、人間と同等か、場合によってはそれ以上に、適切な言葉のキャッチボールができる頼りになる仲間のような存在として現象しつつあります。

このような状況にあって、AI×インターネットの情報通信コミュニケーション・メディアに常時接続された私たちひとりひとりの主観的な意味の経験の領域で生じていることを理解するために、「心」の深層で作動する情報処理のアルゴリズムをモデル化しておくことが重要であると考えます。

 

 

 


主要な論文

  8

主要なMISC

  14

講演・口頭発表等

  1

担当経験のある科目(授業)

  2