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2019年9月6日

脳細動脈硬化におけるⅠ型コラーゲン産生細胞と脳血管周囲マクロファージの役割の解明

第18回 自治医科大学シンポジウム
  • 稲垣 健志
  • ,
  • 藤原 研
  • ,
  • 大野 伸彦
  • ,
  • 坂本 敦司

開催年月日
2019年9月5日 - 2019年9月6日
記述言語
日本語
会議種別
ポスター発表
主催者
自治医科大学
開催地
自治医科大学(栃木県下野市)
国・地域
日本

【I-29】(I: 研究奨励金受賞者)[ポスター発表]

【背景】
脳血管のリモデリングは、高血圧に伴う脳血管障害の病態に深く関わっている。高血圧下において脳の細動脈硬化が進展する過程では、脳血管中膜の平滑筋細胞の変性に加えて、脳細動脈周囲のⅠ型コラーゲンの増生による血管線維化の進行が報告されている。しかし、これらのコラーゲン線維の産生細胞は同定されておらず、その機序も不明である。本研究ではラットの高血圧モデルを用いて、脳血管周囲マクロファージ(perivascular macrophage; PVM)が細動脈周囲のコラーゲン産生に関わる可能性について検討を行った。
【方法】
脳卒中易発症系高血圧自然発症ラット(SHRSP/Izm; 高血圧ラット)とその対照動物(WKY/Izm; 対照群ラット)の4、8、12週齢の雄の個体を用いた。還流固定後に新鮮凍結切片を作製し、各種抗体による免疫組織化学(immunohistochemistry; IHC)とコラーゲン遺伝子Col1a1に対するin situ hybridization (ISH)を行った。一部の動物では電子顕微鏡試料を作製し、透過型電子顕微鏡(電顕)観察を行った。
【結果】
PVMマーカーであるCD206に対するIHCでは、PVMは脳細動脈の分岐部ないし近傍に局在した。12週齢の高血圧ラットの脳細動脈周囲では4週齢の高血圧ラットや12週齢の対照群ラットと比較して、IHCにおけるI型コラーゲンの免疫反応の増加が認められた。また、電顕観察でも12週齢の高血圧ラットのPVM周囲の細胞間隙に、多数のコラーゲン線維が認められた。I型コラーゲンを構成するCol1a1に対するISHでは、脳細動脈近傍に陽性シグナルを有する細胞が散見された。そこでCol1a1に対するISHと各種細胞マーカーに対するIHCの二重染色を行ったところ、脳細動脈近傍のCD206陽性細胞の一部にはISHシグナルとの共局在が認められたが、GFAP(glial fibrillary acidic protein; 星状膠細胞マーカー)やDesmin(血管平滑筋および周皮細胞マーカー)陽性細胞では、ISHシグナルとの共局在は見られなかった。
【結論】
高齢の高血圧モデルラットでは脳細動脈周囲のI型コラーゲンの増生がみられ、Col1a1 mRNAを星状膠細胞や血管平滑筋細胞ではなく、PVMが有していることが示された。PVMは高血圧条件下での脳細動脈周囲におけるコラーゲン線維の増生と関連しており、高血圧の持続によって引き起こされる脳細動脈硬化性変化に関与している可能性が示唆された。

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脳細動脈硬化におけるⅠ型コラーゲン産生細胞と脳血管周囲マクロファージの役割の解明