論文

査読有り
2013年3月20日

インド・ラダーク地方南東部チャンタン高原における遊牧と交易

ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs
  • 稲村 哲也

114-129
14
開始ページ
114
終了ページ
129
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14989/HSM.14.114
出版者・発行元
京都大学ヒマラヤ研究会・京都大学ブータン友好プログラム・人間文化研究機構 総合地球環境学研究所「高所プロジェクト」

筆者は, 総合地球環境学研究所の「高所プロジェクト」の一環として, 2012年9月に短期間チャンタン高原のルプシュの遊牧民の調査を行った. チャンタンでは, 医学班が2011年に遊牧民の健診を実施している. そこで, 本調査では, その研究との連携を主目的とし, 遊牧の移動のパターン, 世帯, 住居, かつて行われていた交易とその衰退, また, その変化について論じた. ルプシュ遊牧民は, 一年を通して, 8ヶ所のキャンプ地を移動する. ルプシュでは, キャンプ地が固定しているだけでなく, その中でのテントサイトも固定する傾向にある. 石積みの半地下式テントサイトは, 寒さを防ぎ少しでも快適に生活するための工夫である. ラダークのチャンパは, 以前は遊牧と交易によって生計を立ててきた. 遊牧については, 基本的なシステムは継承されている. 一方, かつて行われていた, 北のチベット, 西のザンスカル, 南のヒマチャル・プラデーシュへとゆく長距離のキャラバン交易は, 約15年前に消滅した. その背景は, 中国との国境紛争, 舗装道路の開通, 政府による食糧配給による援助, さらに, レーの都市の拡大・観光化や軍の需要などによる市場経済化である. 交易の消滅に伴って, ルプシュの遊牧民の活動は以前よりも軽減した. またオオムギに大幅に依存していた食生活は, 配給制度によって食材の多様性が増すなどの変化が起こっている.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14989/HSM.14.114
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/120005466245
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AN10392447
URL
http://hdl.handle.net/2433/186148
ID情報
  • DOI : 10.14989/HSM.14.114
  • ISSN : 0914-8620
  • CiNii Articles ID : 120005466245
  • CiNii Books ID : AN10392447

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