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2017/11/14

中高の部活動のあり方を考える際に見逃せない教員の「縄張り意識」

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

今年9月に刊行された大修館書店の『体育科教育』2017年10月号に、私が担当させていただいている連載「スポーツの今を知るために」の第103回「中高の部活動のあり方を考える際に見逃せない教員の「縄張り意識」」が掲載されました1


記事の中では、近年社会問題化している中学校や高等学校における部活動のあり方について、教員が抱える問題を「縄張り意識」の観点から検討しています。


本記事を一部修正した内容を以下にご案内しますので、ぜひご覧ください。


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中高の部活動のあり方を考える際に見逃せない教員の「縄張り意識」
鈴村裕輔


近年の教育界における重大な問題のひとつが、中学校と高校における部活動のあり方であることは周知のとおりです。


とりわけ、運動部においては練習時間の長さや休養日の少なさが生徒の健全な成長を妨げるという意見があるとともに、部活動の顧問を務める教員についても休日の練習の指導や試合の引率などの負担の大きさに比べて手当てが安価であることなどが問題視されています。


こうした状況を受け、文部科学省は2017年3月に中学校と高校の部活動の指導のために学外から招聘する部活動指導員を学校職員とし、教員が不在でも部活動指導員が単独で指導を行い、大会などへの引率を行えるように学校教育法施行規則を改める省令を公布し、4月から施行しました。


また、スポーツ行政の中核を担うスポーツ庁も2017年5月に運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議の第1回会合を開催し、運動部に関する指針の作成に取り組み始めました。


このような状況を見れば、運動部であれ文化部であれ、現在の中学校や高校の部活動を取り巻く様子は、好ましい方向へと進んでいるように思われます。


しかし、一片の通知書が出されたからといって状況が一変するものではないことはわれわれが経験的に知るところです。


部活動に関する問題も同様であり、様々な要素が絡み合うことで状況の変化が阻まれているという事実があります。


部活動指導員の招聘に限っても、積極的な活用が進んでいないのが実態です。


もちろん、制度が改まった初年度ということや部活動指導員への人件費の問題などが制度の積極的な運用の障害になっていることは否めません。


それとともに、部活動指導員を置くことに対する教員側の消極的な態度も見逃せません。


例えば、体育科の教員があらゆる競技を専門的に指導できるのではないことは、音楽科の教員であれば誰もが合唱部の顧問として適切な指導ができるのではなく、たとえ声楽が主専攻であったとしても合唱と独唱では指導の内容も変わってくる、という事実からも容易に理解されます。


こうした場合に部活動指導員を活用すれば、専門的な知識によってより体系的で合理的な指導が実現し、生徒の技量の向上が期待されるでしょう。


しかしながら、従来は教員にのみ認められていた大会への引率などが指導員にも許されたことや指導員も部活動の顧問になれることなどで、少なからぬ教員に自分たちの既得権を侵害されるという考えが生じ、結果的に部活動指導員制度の積極的な活用の障壁となっているのです。


確かに、教員の大多数は、生徒がよりよい学校生活を送れるよう、日々自らの担当科目の授業や教材の研究に励み、授業法の改善に取り組んでいます。また、専門のいかんにかかわらず顧問となっている部活動の発展のために積極的に活動しています。


さらに、部活動指導員の中には自らの知識や体験を優先し、生徒を預かる学校側の意見や方針に背く者もいるでしょう。


その一方で、活動の指導を直接行っていない場合でも、学内外を問わず自分以外の者が部活動に関わることを極端に嫌悪する教員がおり、生徒の成長を願って親身な指導を行う指導員がいることも事実です。


いわば教員の「縄張り意識」によって部活動に参加する生徒が適切な指導を受けられないとすれば、一人ひとりの生徒が大きな不利益を被るといわねばなりません。


それだけに、今後、部活動のあり方についての議論の中で教員の「縄張り意識」にも注意が払われることが望まれるのです。
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1 鈴村裕輔, 中高の部活動のあり方を考える際に見逃せない教員の「縄張り意識」. 体育科教育, 2017年9月号, 61頁.


<Executive Summary>
The Territorial Imperative Is a Remarkable Point for the "Club Activites Issue" (Yusuke Suzumura)


My past article entitled with "The Territorial Imperative Is a Remarkable Point for the "Club Activites Issue"" was published on Taiikukakyoiku in September 2017. On this occasion I introduce it to the readers of this weblog.


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