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2018/01/02

第68回NHK紅白歌合戦での露骨な「視聴率至上主義」は「紅白歌合戦の存在意義」を問う

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

2017年12月31日(日)に放送された第68回NHK紅白歌合戦は、関東地区における総合テレビの平均視聴率が、第1部で35.8%、第2部が39.4%でした[1]。


今回も、2012年の第63回以来顕著になっている「視聴率重視」の傾向[2]が継続されました。


従来であれば第2部に出演する歌手が第1部に登場し、第1部に割り当てられていた歌手が第2部に現れる手法は第63回から変わらないところです。


また、「日本アニメ100年」と題して日本のテレビアニメーションの歴史を概観するといった、試みそのものは意義深いものの歌そのものに関係のない企画は、NHK朝の連続テレビ小説を「紅白特別編」などと称して寸劇風に披露することや、2017年に知名度を高めた芸能人たちを曲と曲の合間に多数登場させたのと同様の、露骨な視聴率獲得の手法です。


さらに、2011年には集中的に取り上げられ、「歌でつなごう」と標語にまでなった東日本大震災の被災地や被災者への言及がまれであることは、観る側はともかく作る側にとっては、少なくとも東日本大震災は番組として扱う価値が低下したことを表しているといえます[3]。


実際、2016年の第67回から2019年の第70回まで4回をかけて、「夢を歌おう」という標語の下、2020年に開催される予定の東京オリンピック及びパラリンピックを中心に据えて番組が構成されています。


いわゆる大トリを務めるゆずに2012年のロンドン五輪におけるNHKのテーマ曲である『栄光への架け橋』を、特別出演となる安室奈美恵が2016年のリオデジャネイロ五輪のテーマ曲『HERO』を歌唱したことなどは、2016年から2019年までの「五輪シフト」ともいうべき体制を象徴しています。


この様子では、今年の紅白歌合戦では平昌五輪でのNHKの主題曲を取り上げ、2019年の紅白歌合戦は2020年の東京オリンピック及びパラリンピックの主題曲の発表を兼ねる場となるかも知れません。


もちろん、岩手県出身の福田こうへいを2016年と2017年の2年にわたって連続で起用したことは、一面において東日本大震災への配慮であるかもしれません。


しかし、福田こうへいの歌唱する曲が村田英雄の『王将』であったことは、審査員として将棋の加藤一二三九段が起用されたことに対応する措置であり、今や製作する側にとって東日本大震災は五輪に比べて視聴者への訴求力がなく、強いて取り上げる必要がない話題であると判断されていることを示唆します。


こうした状況の中でかろうじて評価に値するのは、いわゆる演歌歌手の歌唱の際にアイドル歌手が「踊りで応援します」などと言いながら、歌の内容とは関係の乏しい踊りや掛け声をかける演出が影を潜めたことです。


アイドル歌手や人気グループが歌うときに演歌歌手が登場するということがないことを考えれば、こうした演出は「演歌では視聴率が取れないから、視聴率の取れるアイドル歌手と抱き合わせて登場させる」という制作者側の意図を反映しているのですから、今回の演出の変化は好ましい態度というべきでしょう。


いずれにせよ、「国民的娯楽番組である」という自己規定を証明することと次回の予算の維持とに汲々とするばかりの紅白歌合戦は、その存在意義から根本的に見直されるなければならないときを迎えているのです。


[1]NHK総合「紅白歌合戦」. ビデオリサーチ, 2018年1月2日, http://www.videor.co.jp/tvrating/past_tvrating/music/02/index.html (2018年1月2日閲覧).
[2]鈴村裕輔, 第65回NHK紅白歌合戦が示した視聴率獲得のための露骨な便宜主義. 2015年1月3日, http://researchmap.jp/joardo335-18602.
[3]鈴村裕輔, 第64回NHK紅白歌合戦が再び示した露骨な視聴率獲得への志向. 2014年1月3日, https://researchmap.jp/joov40roe-18602.


<Executive Summary>
The 68th NHK Kohaku Utagassen Even Is Still Maintaining a High Audience Rating (Yusuke Suzumura)


The 68th NHK Kohaku Utagassen, Red and White Singing Contest, was held on 31st December 2017. The producers and NHK still aimed to maintain a high audience rating and their intent was easy to find through program and pairing of singers.


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