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2018/03/08

自民党の「憲法への緊急事態条項の追加」を巡る議論は何故憂慮されるのか

Tweet ThisSend to Facebook | by suzumura

昨日、自民党の憲法改正推進本部が全体会議を開き、日本国憲法を改めて大災害時などに特別な措置を講じる「緊急事態条項」を追加する案について、細田博之本部長に対応を一任しました[1]。


この日の会議で憲法改正推進本部の執行部示した条文案は「緊急事態」の範囲に日本への武力攻撃や内乱を含み、政府の権限として私権の制限や自治体への指示も与える内容と、対象を大規模な自然災害に限定し、私権制限の直接的な規定は盛り込まない内容と二大別され、執行部は校舎の案でまとめる見込みです[1]。


具体的には、自民党憲法改正推進本部執行部が有力視する「緊急事態条項」に関する憲法の条文の案は以下の通りです[1]。


【「大規模な震災」等に係る規定案】
第○条 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定又は予算の議決を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、あらかじめ法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定し、又は財政上の支出その他の処分を行うことができる。
(2) 前項の政令又は処分は、〇日以内に国会の承認がない場合には、その効力を失う。
【国会議員の任期特例等に係る規定案】
第○条 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、あらかじめ法律で定めるところにより、内閣の要請に基づき、各議院の出席議員の三分の二以上の多数で、(〇月を超えない範囲内において、)その任期及び選挙期日の特例を定めることができる。


自民党憲法改正推進本部執行部が有力視しているとされる条文の案は一見すると緊急事態を「大地震その他の異常かつ大規模な災害」に限定しており、抑制的な規定であるかのように思われます。


しかし、文面を子細に眺めると、例えば「大規模な震災」等に係る規定案」では、「大地震その他の異常かつ大規模な災害」における「大地震」がどの程度の規模の地震であるのか、あるいはが「異常かつ大規模な災害」具体的に何を指すのかが不明であることが分かります。また、誰によってある状態が「国会による法律の制定又は予算の議決を待ついとまがないと認める特別の事情」となるのか、判断の主体も明示されていません。


さらに、「国会議員の任期特例等に係る規定案」においても、「衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認める」主体が不明であるばかりでなく、「各議院の出席議員の三分の二以上の多数」とはいうものの最低限の出席議員の数を明記していないため、場合によっては衆参両院で3名ずつ、合計6名で国会議員の「任期及び選挙期日の特例を定めることができる」ことになりかねないことが分かります。


もちろん、「あらかじめ法律で定めるところ」の内容において、これらの不明点が明瞭に規定されることはあり得ますし、現時点では大まかな方向性のみを示し、今後表現を推敲して具体的な内容を含む案に改めることもあり得るでしょう。


その一方で、憲法学者からは「現行憲法に規定がないのは通常の法律で十分対応できるからで、そこを飛ばして大規模災害に迅速な対応が取れないのは憲法に規定がないからだというのは間違った議論だ」という指摘があるように[2]、憲法を改めるために反対の少ない事項を対象にしようとするなら、そのような態度は目的と手段を倒錯させているものとしてと批判されなければなりません。


少なくとも、現時点で「緊急事態条項」に関する条文の案は不十分な内容であることは容易に推察されます。そして、われわれは、憲法の変更を求める人たちが、憲法は日本国の基本的なあり方を定める根本法であり、拙速主義的な態度を戒め、主権者たる国民の判断を仰ぐために最善を尽くすことが不可欠である点を忘れぬよう、改めて注意を喚起するのです。


[1]大災害時 政府権限を強化. 日本経済新聞, 2018年3月8日朝刊4面.
[2]権力の集中 歯止め議論を. 日本経済新聞, 2018年3月8日朝刊4面.


<Executive Summary>
Are Articles of Emergency Needful for the Constitution of Japan? (Yusuke Suzumura)


Headquarters for the Promotion of Revision of the Constitution of the Liberal Democratic Party decide that forming new articles of emergency shall be summed up by the LDP's Party Convention held on 25th March 2018. It is not adequate plan for the LDP, since forming articles concerning on emergency is not needful issue for the existing constitution and mistake the means for the endget their priorities.


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